その頭痛、経過観察でいいのでしょうか②
記事執筆:
- 目次
前回のおさらい
- 頭痛患者の約80%は良性の頭痛
- 頭痛全体の2~3%が、くも膜下出血などの重症疾患が原因といわれている
- 良性タイプか重症化タイプかの鑑別・初期対応が命を救う分かれ目となる
- 問診とバイタルサイン評価を行い、素早く医師や救急隊に報告することが大切
その頭痛、経過観察でいいのでしょうか①
緊急性の判断ポイント
頭痛
▼
第一印象の観察(話ができるか・表情など)
▼
A(気道)B(呼吸)C(循環)D(意識レベル)E(体温)の確認
▼
「頭痛」以外の追加情報を集めよう!
・バイタルサインの確認
・意識レベル、麻痺の有無、瞳孔・対光反射、目の見え方、項部硬直の有無
・一次性(機能性)頭痛の既往、薬剤の内服歴の確認、高血圧の有無、同様の症状の発症歴など
・「 今までに経験したことのない頭痛 」というフレーズは要注意!
事例で考えよう➀(病院の場合)
事例
- 糖尿病の教育入院中
- 身長150㎝、体重100kgで体重コントロールも併せて指導を受けている。
- シャワー浴後自室で休憩していたが、突然の後頭部痛を訴え意識レベルが低下していたところ、同室者がコールをした。
アセスメントと報告例
ABCDEの確認
意識レベルJCSⅡ-10、うーんうーんと話しているが、意思疎通不可。
枕元には嘔吐した跡あり、いびき様呼吸、瞳孔不同なし、対光反射左右あり。
体温36.2℃ 血圧180/100mmHg 脈拍40回/分 SpO298% 呼吸回数20回/分
レベル低下やいびき様呼吸がみられるため、緊急事態と考え、CALL OUTを活用して主治医に連絡します。
医師への報告
〇〇病棟看護師の×です。
糖尿病教育入院中のAさんですが、シャワー浴後に突然の後頭部痛を訴え、意識レベル低下しJCSⅡ-10レベル、嘔吐もされています。いびき様呼吸です。脳卒中の可能性を考えて、気道確保、ルート確保中です。すぐに病棟に来てください。救急処置室に搬送しています。
わかりました。処置室に向かいます。
医師に「I-SBAR-C」で報告
I
「〇〇病棟の看護師の×です。糖尿病教育入院中のAさんの急変がありました。」
S
「シャワー浴後、自室で休憩されていましたが、突然の後頭部痛を訴えられ、意識レベル低下を起こし、嘔吐もされ、いびき様呼吸がみられます。」
B
「JCSⅡ-10 血圧180/100 脈拍40回 呼吸数20回 SpO298% 体温36.2℃ 瞳孔不同はありませんが、クッシング徴候がみられています。」
A
「脳卒中の可能性が高いです。」
R
「気道確保、ルート確保、モニター装着して処置室へ搬送しています。すぐに処置室へお願いします。」
事例で考えよう②(在宅の場合)
事例
- 脳梗塞の既往あり。
- 左不全麻痺あり、要介護2
- 妻と二人暮らし
- 自宅内はゆっくり伝い歩きができ、意思疎通もできる。
- 3日前から風邪症状があり、食欲低下を認めふらつきもあった。水分はこまめにとっていた。
- 本日訪問看護師が訪問すると、割れるように頭が痛い、昨日の夜に転倒し頭をタンスの角にぶつけた、血は出なかったが少しずつ頭が痛くなり、休んで様子をみていたと話す。
- 呂律困難もあり。
アセスメントと報告例
ABCDEの確認
体温37.8℃、血圧150/78mmHg、脈拍90回/分、不整あり、呼吸回数20回/分
SpO296% 意識レベルJCSⅠ-3 いつもよりぼんやりしており、反応もゆっくり。
左上下肢の麻痺はやや悪化、MMT3/3(普段は4/4)瞳孔不同なし、対光反射あり
右側頭部に頭部打撲跡の内出血がみられる。抗凝固剤内服中。
意識レベルの低下、麻痺の悪化、抗凝固剤内服中ということから頭蓋内出血を考え、往診医に連絡します。その後、本人・妻に救急搬送の手続きをしていくことを説明します。
往診医へ「I-SBAR-C」で報告
I
お疲れ様です。
利用者のBさんの件で急ぎの相談があります。今、お時間大丈夫でしょうか?
はい、大丈夫です。
S
昨夜、トイレに行こうとして転倒し右側頭部をタンスの角で打撲されています。外傷は打撲跡のみですが、今朝から頭痛が出現し、左上下肢の麻痺の進行、呂律困難がみられています。
B
体温37.8℃ 血圧150/78mmHg 脈拍90回/分 不整あり 呼吸回数20回/分
いつもよりぼんやりしており反応もゆっくりで、左上下肢の麻痺はやや悪化、MMT3/3普段は4/4です。瞳孔不同なし、対光反射あります。
A
抗凝固剤の内服もされているので、頭蓋内出血を起こしている可能性があります。
R
救急搬送を検討していますが、いかがでしょうか?
C
救急搬送の方がいいですね。どこの病院に搬送されたか、また教えてください。
わかりました。今から救急車を要請して搬送します。
救急隊へ「I-SBAR-C」で情報共有
I
消防ですか、救急ですか。
救急搬送です。訪問看護師が連絡をしています。
消防センターから、住所、氏名の確認があります。
S
昨夜、トイレに行こうとして転倒し右後側頭部をタンスの角で打撲されています。外傷は打撲跡のみですが、今朝から頭痛が出現し、左上下肢の麻痺の進行、呂律困難がみられています。脳梗塞の既往があり、抗凝固剤の内服もしています。
B
体温37.8℃ 血圧150/78mmHg 脈拍90回/分 不整あり 呼吸回数20回/分SpO296% 意識レベルJCSⅠ-3いつもよりぼんやりしており反応もゆっくりで、左上下肢の麻痺はやや悪化、MMT3/3普段は4/4です。瞳孔不同なし、対光反射あります。
A
頭蓋内出血の可能性も考え、往診医にも連絡し、救急搬送の指示があり連絡しています。
R
救急搬送お願いします。往診医は〇〇医師になります。
10分後に到着予定です。
C
10分後に到着予定ですね。急変に対応できるように観察を続けておきます。
救急隊到着まで
救急隊が到着するまでの間に、利用者の観察、バイタルサイン測定をしつつ、同乗できる家族には、保険証、お薬手帳、携帯電話など貴重品と受診の用意、他に連絡する家族がいるなら連絡してもらうように声をかける。救急隊が到着したら、バイタルサインなどを伝えます。
搬送先が決まったら、往診医にも連絡します。
急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。
状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。
また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。
もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。