酸素療法どれを選択する?
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呼吸療法について
前回のブログで、呼吸不全は「低酸素血症(PaO2 60mmHg以下)である」と定義されていましたね。
呼吸リハビリを急性期ケアに活かす方法
「極度の低酸素」は細胞死を招き、心停止、脳死、呼吸停止、など致命傷となるため、絶対に回避しなくてはなりません。しかし、むやみに酸素を投与すると高二酸化炭素血症や、呼吸性アシドーシスなどの重篤な副反応が出現する恐れもあります。そこで、患者の状態にあった適切な呼吸療法を選定することが重要になっていきます。
呼吸療法には、大きく2つあります。
- 酸素療法
- 人工呼吸
今回は、上記のうち「酸素療法」について詳しく見ていきましょう。
酸素療法の種類
酸素療法にはいくつか種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
①低流量システム
低流量システムは、患者さんの1回換気量以下の酸素ガスを供給する方式で、不足分は周囲の室内気を吸入することになります。軽度~中等度の低酸素血症に対して日常臨床で広く使用されています。
鼻カニューレ
鼻カニューレは「比較的低コストで行えて、患者さんの生活に制限が少ない」のが特徴です。
・酸素を吸入しながら会話や飲食ができる
・装着時の閉塞感・圧迫感などの違和感が少ない
・低濃度の酸素投与に適している
・口呼吸している患者さんには適さない
・6L/分以上で使用すると鼻粘膜を刺激し、頭痛が起こったり、鼻粘膜が乾燥したりするため使用できない
・チューブが固いと耳介部に皮膚トラブルが起こりやすい
簡易酸素マスク
マスクで鼻と口を覆い酸素を供給するデバイスで、鼻カニューレよりも高濃度の酸素を投与できます。鼻カニューレと同様に広く使われています。
・鼻カニューレよりも高い吸入酸素濃度が得られる
・口呼吸の患者にも使用可能
・口と鼻を覆うため圧迫感があり、食事の際はマスクを外す必要がある・PaCO2上昇の心配がある患者さんには使用できない
・5L/分以上の酸素を流さないと、呼気ガスを再吸収する恐れがある
・呼吸抵抗が増す
・低濃度の酸素投与には適さない
開放型酸素マスク
2017年に改訂された「酸素療法マニュアル」に掲載された新しいデバイスです。大きな開口部があり、呼気ガスがこもらず、息苦しさや圧迫感が少ないマスクで、オープンフェースマスクとも呼びます。
・大きな開口部があるため、息苦しさや圧迫感が少ない
・呼気ガスの貯留が起こりにくいため、5L/分未満の酸素流量でも使用できる・マスクをつけたまま、ストローで水分を摂ったり、吸引チューブで痰の吸引ができる
・横からの風に弱い
リザーバー付き酸素マスク
酸素を溜めるバッグが付いたリザーバーシステムのマスクです。より高濃度の酸素投与をするときに使われます。
・酸素チューブから流れる酸素とバッグ内に溜めた酸素を一緒に吸い込むため、高濃度の酸素が吸入できる
・高濃度の酸素を吸入させるので、長期間の使用には適さない
・酸素流量が少ないと、呼気ガスの再呼吸によりPaCO2が上昇する可能性がある・マスクが顔に密着していないと、吸入酸素濃度が低下する
②高流量システム
患者さんに最大吸気流量以上の酸素ガスを供給する方式で、患者さんの呼吸パターンに関係なく設定した酸素を吸入させることができます。
ベンチュリーマスク
患者さんの呼吸パターンに左右されにくく、一定の酸素濃度を維持できるため、COPDなどⅡ型呼吸不全の患者に用いられます。
・患者さんの呼吸パターンに影響されにくい
・一定の酸素濃度を維持できる
・使用方法が複雑
ネブライザー式酸素吸入器
高流量システム使用時で十分な加湿が必要な時に選択します。インスピロンネブライザ、アクアパックネブライザーとも言います。
・人工気道留置中の患者の酸素療法に適している・人工呼吸離脱後に適している
・全身麻酔後などにも適している
・使用方法が複雑
・使用中に加湿水を継ぎ足すと外気の雑菌が入り込み繁殖してしまう可能性があり、加湿水を継ぎ足すことができない
種類による流量と酸素濃度の目安
酸素療法では、これらの多くの酸素投与デバイスを用います。
- 鼻カニューレ
酸素流量1.0~6.0L 吸入酸素濃度24~44%
- 低流量マスク
酸素流量5.0~8.0L(解放型ならば、酸素流量3.0~10L)吸入酸素濃度40~60%
- リザーバー付き酸素マスク
酸素流量6.0~10L以上 吸入酸素濃度60~90%以上
が可能です。ベンチュリーマスクやNPPVでは、より細かく酸素濃度の調整ができます。NPPVでは調節呼吸も可能です。酸素投与のデバイス選択では、メリットとデメリットを十分考慮し必要な観察項目を追加します。
このようにたくさんの種類がありますが、その中から患者の状態にあったものを選択して使用します。また、一つのデバイス使用し続けるのではなく、適宜アセスメントし評価することが重要です。
次回は人工呼吸について深堀してお届けします。
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