カフェイン中毒~身近に潜む中毒たち①~

2024年8月27日 ライブラリー

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目次

中毒について

中毒とは

化学物質や自然界に存在する物質の毒性によって生じた、生体の有害反応をいいます。

アナフィラキシー・毒素によらない細菌性食中毒・慢性薬物依存は一般的には含まれませんが、毒蛇咬傷は急性中毒として扱われます。

化学物質が体内に入る経路としては,経口・経気道・経皮・経静脈・経眼などがあります。吸収される時間や発症は、体内に入る経路によって大きく左右されます。

中毒に対する治療の基本方針

全ての中毒治療で共通する原則は以下の4つになります。

中毒に対する治療 基本方針
  • 全身管理
  • 吸収の阻害
  • 排泄の促進
  • 解毒薬・拮抗薬の投与

原因不明の意識障害や呼吸不全など中毒を疑われる患者が救急搬送されてきた場合、以上の原則を念頭に観察・処置を行います。

初期対応では、①全身状態の評価と併せて、②有害物質の種類や侵入経路を特定します。

全身状態の評価

第一印象の確認

大まかな意識レベル・呼吸状態・循環状態を確認します

① 発汗、皮膚・粘膜の乾燥、流延、流涙、皮膚の色調の変化

② 呼吸の速い・遅い

③ 着衣や外見、臭いなど

ABCDEの評価と救命処置

ABCDEの評価

特に気道・呼吸・循環の対応を優先する

 

①瞳孔所見(縮瞳または散瞳)

  • 散瞳

    アルコール・ニコチン・カフェイン・抗コリン薬・幻覚薬など

  • 縮瞳

    合成麻薬・鎮静薬・睡眠薬・コリン作動薬など

② 反射の減弱または亢進、痙攣、振戦

③ 消化器症状(腹痛・嘔吐・下痢など)

 

得た情報から中毒の特徴を評価する

その他、追加の情報収集を行う
現場状況・既往歴・薬物常用量・残存量など

 

生命の危険がある場合は、速やかに救急処置を行います。

有害物質の種類や侵入経路を特定

問診や観察・血中濃度の測定・尿中薬物の測定により原因物質を特定できたら、速やかに吸収抑制・体外排泄の処置を行います。

【処置中の留意点】
  • 呼吸・心拍のモニタリングを行う

    不整脈や呼吸抑制などをきたすことがあるため

  • 嘔吐の合併症(誤嚥)の予防

    意識レベルの低下や有害物質によって発生する嘔吐による合併症を防ぐ

  • 痙攣発生時は、痙攣のタイプ、持続時間の観察を行う

    気道・呼吸の障害がある場合は、すぐに気道確保を行う

  • 体温に応じた保温を行う

注意点

問題となる有害物質によっては、対応するスタッフへの二次暴露の危険性がある点には注意が必要です。

二次暴露を防止するためには、患者の血液・体液はもちろん、呼気・衣類などから気化物による暴露の危険性を念頭に置き、安全性を確保する必要があります。

カフェイン中毒

カフェイン中毒とは、中毒のうち、カフェインを一度に大量摂取することによって生じる中毒症状のことです。

カフェイン中毒による救急搬送が増加している実態

現在、カフェインの摂取が原因で救急搬送される若者が急増しています。

日本中毒情報センターは、相談件数の推移について下記のように報告しています。

⽇本中毒情報センターの中毒 110 番には、カフェインを含む⾷品や眠気防⽌薬の誤飲や過量摂取に関する相談が毎年 30 件程度寄せられていますが、2015 年の報道以降、相談件数が増加しました。

公益財団法⼈ ⽇本中毒情報センターの調査による

TOP|日本中毒情報センター

眠気覚ましを謳った清涼飲料水やエナジードリンク、インターネットで販売されている海外の健康食品といったカフェインを多く含む食品もあり、短期間に大量に飲んだり、カフェインを含む医薬品(眠気防止薬や総合感冒薬、痛み止めなど)を併用した場合は注意が必要です。

ではカフェインによる中毒症状は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。

作用機序

カフェインは、神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と化学構造が似ているため、アデノシンの結合する場所に結合します。それにより、アデノシンの働きが阻害され、神経を興奮させます。

カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい・心拍数の増加・興奮・不安・震え・不眠・消化器管の刺激による下痢・吐き気・嘔吐などの症状が現れます。

長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています。

出典:農林水産省Webサイト

カフェインの過剰摂取について

危険な摂取量

カフェインの急性中毒は、1時間に400mg~500mg以上のカフェイン摂取で発症すると考えられます。

致死量については個人差による影響が大きいですが、一般的には1日に3000mg~5000mg以上のカフェイン摂取と考えられます。

カフェイン中毒になる具体的な一日の摂取量(体質やカフェインに対する耐性による個人差あり)

  • 健康な成人

    1日あたり400mg以上のカフェイン(コーヒーなら約4杯~5杯に相当)

  • 妊娠中や授乳中の女性

    1日あたり最大300mgまで(コーヒー約2杯~3杯)

 

食品・薬品中のカフェイン濃度(100㎖に含まれるカフェイン量)

食品・薬品名 カフェイン濃度
エナジードリンクまたは
眠気覚まし用飲料

32~300㎎

眠気・だるさ防止薬(1錠)

薬によって様々だが、最大で167㎎含まれるものもある

コーヒー

60㎎

インスタントコーヒー

57㎎

紅茶

30㎎

煎茶

20㎎

ほうじ茶

20㎎

※食品安全委員会「食品中のカフェイン」、眠気・だるさ防止薬の添付文書を元に作成

急性カフェイン中毒の治療方法

一次的な多量のカフェイン摂取が原因の場合、摂取量が重要な情報となります。

典型的な症状として、「頻脈・高血圧・散瞳・口渇」などがあります。

カフェインに対して拮抗薬はなく、治療は対症療法が基本となります。重症の場合は血液透析も有効とされています。

  • 体内からカフェインを取り除く

    胃洗浄、活性炭、下剤の使用

  • 薬物療法

    脱水症状には点滴、心拍数の異常はβブロッカーの投与など

  • 全身状態の管理が必要な場合は入院加療

 

さいごに

カフェインは私たちの周りのさまざまな食品に含まれており、ジュースなど子どもが手にしやすいものもあります。

患者がどのように今回の中毒に至ったのか、経緯をよく聞き、再発を予防するためにも、本人の置かれている生活環境、身体的状況、精神的背景、社会背景なども確認して、介入していくようにしましょう。

 

 


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