日本急性期ケア協会について
学術顧問の
あいさつ
この度、日本急性期ケア協会の学術顧問として、
長崎大学病院 災害医療支援室の准教授である
山下和範様に就任いただきました。
就任のご挨拶として、山下准教授にお話を伺いましたので、その様子をお伝えいたします。
その時に自分ができることが救急対応のすべて
救急医療に携わることになったきっかけを教えてください
研修医だったころ、大阪大学病院の救急科に行ったことがきっかけです。
当時は今と違って、救急医学の講義なんてものはなかったんです。
なので、救急科がどんなことをするかもあまり知らない状態で行き、1年間を現場で過ごしました。
救急科では、早い展開の中で、自分の判断・自分の処置・自分の対応で患者さんが劇的に改善することがある。
その緊張感が面白いなと思いました。
そういった救急特有の素早い展開に、プレッシャーを感じる方もいらっしゃるかと思いますが…。
もちろん、私もプレッシャーを感じることはあります。今まで手から零れ落ちてしまった命もいくつもあると思います。
ただ、ある時から、今そこで自分ができることがすべての最大限なんだろうな、と感じるようになりました。
「その状況、その環境で僕が携わっていることがベストなんだ。それで駄目なら駄目なんだ。」と思うようになって、
そうなればできることをやるしかないので。そう思えてから、プレッシャーは少なくなりました。
リアルなものを学んでもらうことが大切
救急医療と災害医療に違いはありますか。
救急と災害は似て非なるもの、とよく言われます。
医療資源が豊富な状況で1人の重症者に注力できるのが救急医療で、限られた資源でいかに多くの重症者を救うか、というのが災害医療です。
災害時の医療対応は救急医療に携わっている人が学べばいいかと言えば、決してそうではありません。
災害時の医療対応は長丁場になりがちなので、救急医だけが専門的に災害医療を学んでいても、医療を行き渡らせることは難しいです。
すべての医療者がいつかは学ぶべきでしょうし、災害時に積極的にか関われるような姿勢が必要だと思います。
救急対応を行う際に気をつけていることはございますか
まずは救急隊から連絡をもらった時点で、何が起きているかを予測することが大切だと思います。
救急隊の業務を妨げてはいけないのですが、簡潔にやり取りを行って、傷病者のイメージを掴みます。
そして、第一印象でヤバいかヤバくないかの緊急度を見極めることも重要ですね。
最初の情報をキャッチするときに気をつけています。
医療について教育する際、何か気をつけていることなどございますか?
研修医や学生の教育などにも携わっていますが、できるだけリアルなものを体験してもらおうと思っています。
実際に患者さんの対応をする時も、見学だけでなく極力手を動かして、手伝ってもらうようにしています。
チームの一員になったという意識を少しでも持ってもらうことで、得るものが大きくなるんじゃないかと。
模擬体験やシミュレーションを行うことは、教育にはとても有効だと思います。
どの分野に興味を持つかも人によって違うので、一定のレベルまでは全員に伝えて、興味をもってくれた人にはさらにフィードバックしていくといいと思います。
「急性期ケア」をより多くの人へ
以前、急性期ケア専門士のセミナーの講師を務めていただきましたが、参加者の印象はいかがでしたか?
参加していただいた方は皆さんとても熱心でした。
救急対応の初心者・初学者でない方もいらっしゃいましたが、
介護施設や福祉施設で勤務されている方も参加いただいていて、それってこれからものすごく重要になってくることだと思うんです。
医療が高齢化に対応するためには、病院だけでなく在宅での看取り体制を整える必要があります。
その中で介護施設や福祉施設が担う役割は大きいと思いますし、入所されている患者さんが突然状態が悪くなった時に対応できるスタッフの方がいらっしゃると、施設も利用者も安心だと思います。
学術顧問として、協会の活動で目指していることなどはございますか?
医療者向けのものだけでなく、介護施設に勤めておられる方にも学びやすいような講義などは行いたいです。
以前、メディカルラリーを模して「福祉ラリー」というイベントを開催したことがあって、介護福祉士の方にシナリオに沿ってシミュレーションを行っていただきました。
そんな風に、例えば私のいる長崎で急性期ケア専門士の実地研修なども行えたらいいですね。
実践的なことを繰り返し学べるようなことができれば、だんだんと自分の対応に自信が持てると思います。
可能ならそういった場に地域の救急隊の方にも参加いただいて、参加者同士の横のつながりも生みだせると面白そうです。
急性期ケア専門士を目指す方へメッセージをお願いします。
「急変」という言葉を聞くと、どうしても身構えてしまうと思いますが、危機に面した状況を解きほぐしていく方法が、ある程度はフレームとして定まっています。
一番大事なことは急変に直面した際に助けを呼べることです。
わからないことはわかる人に聞くのがいいので、周囲の助けを借りながら対応を進め、その中で対応法を身につけましょう。
あまり怖がらずに、自分にできることから取り組んでいただければと思います。
山下 和範
長崎大学病院 災害医療支援室
- 2006年
- 長崎大学病院 救急部 助教
- 2010年
- 長崎大学病院 高度救命救急センター 助教
- 2014年
- 長崎大学病院 高度救命救急センター 副センター長(准教授)
- 2017年
- 長崎大学病院 災害医療支援室
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