アルコール中毒~身近に潜む中毒たち③~

2024年10月3日 ライブラリー

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目次

アルコール中毒について

2種類のアルコール中毒

アルコール中毒は大きく二つに分けられます。

  • 急性アルコール中毒

    短時間に大量のアルコールを摂取することで、呼吸停止など生命の危険をきたしうる状態

  • アルコール依存症

    長期に渡り大量のお酒を飲み続けることで、お酒を飲まないといられなくなった状態。心身ともに影響を受け、仕事や日常生活に支障が出てくることがある

急性アルコール中毒

血中アルコール濃度と臨床症状

酔いの程度を測定するスケールとして血中アルコール濃度を使います。血中アルコール濃度と酩酊度との関係を示したものがこちらです。

  • 0.02%~0.1%程度

    ほろ酔いと呼ばれるリラックスした状態

  • 0.3%を超える

    泥酔期と呼ばれるもうろう状態

  • 0.4%を超える

    昏睡期という生命に危険を生じうる状態

中毒症状が現れる血中アルコール濃度は、一概に何パーセントからが急性アルコール中毒であるとは言えません。個人差があるためです。また長期間アルコールにさらされていると、血中濃度が高くても症状が出ないこともあります。さらに同じ血中濃度でも、飲み始めで血中濃度が急激に上昇している時は症状が重く出やすいという特徴があります。

アセスメント

救急搬送されてきた場合には、急性アルコール中毒だ!とすぐに決めつけずに、見落としてはならない病態が隠れていないかを確かめることが重要です。

見落としがちな病態
  • 低血糖
  • 電解質異常

    特に低Na/低K/低Mg/低P血症

  • 外傷

    頭部・眼窩・頸部・胸腹部外傷(慢性肝炎と思ったら肝損傷など)

  • 「意識障害」の鑑別疾患

    特に脳卒中

  • 「嘔吐」の鑑別疾患

    特にACS

呼吸と意識の確認を行うと同時にけがの痕跡がないかと低血糖の有無を確認します。

急性アルコール中毒の場合、転倒している可能性も高いため頭部のCT検査を検討します。また、飲酒中に重大な疾患を起こしている可能性もあるため、目撃者がいれば、意識を失う前の症状を聴取します。

対処法

①一人にしない

②衣服を緩める

③体を温める(体温が下がるのを防ぐ)

④回復体位にする。側臥位にし、頭をそらせ気道確保するとともに、嘔吐しても自然に流れるようにする

⑤無理に嘔吐させない(窒息する可能性がある)

⑥嘔吐する場合は、体を起こさず横向きのまま嘔吐させる

輸液の必要性について

急性アルコール中毒と診断された場合には点滴による経過観察となる場合も多いです。しかし、脱水がある場合を除いて、大量の輸液は有効でないと言われています。脱水の有無が判断できない場合や、急変の可能性なども考慮し、ルート確保の目的で維持輸液を流しておくという程度でいいでしょう。

大切な関わり方

急性アルコール中毒で搬送されるのは、スタッフの少ない夜間が多いです。また、患者層として、若くて力の強い方も多く、暴力行為などが発生すると制御困難となる場合も考えられます。

そのため、急性アルコール中毒患者による問題行動には十分注意が必要です。実際に処置中、看護師が患者に頭を殴られるなどの被害も報告されています。

暴言・暴力などの迷惑行為が見られる場合は、スタッフや他の患者の安全確保を考え、ためらわず警察へ通報しましょう。

アルコール中毒や依存症に関する啓発活動として、厚生労働省による「アルコール健康障害対策」や、イッキ飲み防止連絡協議会による「単位・ドリンク換算 分解時間のめやす電卓」などのツールもありますので、活用いただければと思います。

文献

ERに搬入された急性アルコール中毒患者の検討

 

 


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