もしかして脳梗塞かも?脳を救え!①
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- 目次
脳梗塞の概要・それぞれの特徴
脳梗塞とは、脳動脈の狭窄や閉塞が起こることにより、脳組織への血流が妨げられ虚血に至り、時間の経過とともに脳組織が壊死してしまう病気です。血栓などが原因です。
発症のしくみにより次の3つのタイプに分類されています。
- アテローム血栓性脳梗塞
- ラクナ梗塞
- 心原性脳塞栓症
それぞれのタイプごとに原因と判別のポイントを整理していきましょう。
アテローム血栓性脳梗塞
脳梗塞の中で頻度が最も高いです。
太い血管が動脈硬化で細くなり狭窄や閉塞することで起こります。具体的には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒、加齢などが原因としてあります。
〈症状〉
・睡眠中から起床時など、安静時に発症することが多い
・片麻痺・構音障害等に加え、失語などの皮質症状、意識障害あり。TIA(一過性脳虚血発作)の先行が20~30%あり
・ときに、症状の階段状の悪化がある
ラクナ梗塞
脳梗塞の中で2番目に頻度が高いですが、予後は比較的良好です。
高血圧や加齢により細い穿通枝が閉塞(直径15mm未満の小さな病変)することで起こります。
〈症状〉
・半身の脱力(運動障害)、半身のしびれ(感覚障害)など障害が比較的軽く、意識障害は起こらない
・繰り返すと、脳血管性認知症やパーキンソン症候群の原因になることがある
心原性脳塞栓症
心疾患(非弁膜症性心房細動など)により心臓内に血栓ができ、それが脳動脈を閉塞することで起こります。
重篤な症状になることが多く、3つのタイプのうち、最も重症になりやすいタイプです。
〈症状〉
・活動時に突然発症し、短時間で症状が完成する
・片麻痺、共同偏視、半側空間無視、半盲、失語などの皮質症状、意識障害を多く認める
・大きな血管が詰まるため広範囲な梗塞巣となる
脳梗塞の検査
脳梗塞の治療の基本は、
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- 脳ヘルニアを見逃さないこと
- 一秒でも早く脳血流を再開させること
- 脳組織の壊死部分を最小限に抑えること
がポイントとなります。
緊急性の判断ポイント
第一印象の観察
「話が出来るか」と「表情はどうか」などを確認します。
ABCDEの評価
A(気道)B(呼吸)C(循環)D(意識レベル)E(体温)の確認をしましょう。
追加情報を集めよう!
・バイタルサインの確認、血圧の左右差が無いか、脈は両手でチェック
・顔面神経麻痺の有無、呂律困難の有無
・脳卒中が疑われる場合は、シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)、ELVOスクリーン、NIHSS、MMTで評価する
・意識レベル(AIUEOTIPS)、麻痺の有無、瞳孔・対光反射、目の見え方、頸部硬直の有無⇒脳ヘルニアのサインが無いかをチェックする
(GCS合計8点以下、2点以上の低下、JCSⅡ-30以上、瞳孔不同・片麻痺・クッシング現象:高血圧を伴う徐脈)
・薬剤の内服歴の確認、高血圧・心房細動・脂質異常症など脳梗塞の原因疾患の有無
・同様の症状の発症歴(SAMPLE法)
・低血糖の有無
・発症時間の確認、「最後に元気だった時間」の確認
検査
梗塞部位、確定診断
・頭部CT(出血の有無が分かる、広範囲の脳梗塞:early CT signの有無)
・MRI(拡散強調画像:DWI):24時間以内の脳梗塞
・心電図
・心エコー
・胸部
・腹部レントゲン
・採血など
脳梗塞の治療
急性期治療
A:グレードA(行うように強く勧められる)
B:グレードB(行うように勧められる)
C:グレードC(科学的根拠がない)
×:適応なし
薬剤名 | アテローム血栓性 | ラクナ梗塞 | 心原性 | 適応時となる発症からの時間 | |
血栓溶解薬 | rt-PA(アルテプラーゼ) | A | A | A | 4.5時間以内 |
ウロキナーゼ | B | C | B | 6時間以内 | |
抗血小板薬 | オザグレルナトリウム | B | × | B | 5日以内に開始、投与期間14日以内 |
アスピリン | A | A | A | 48時間以内に開始 | |
抗凝固薬 | ヘパリン | C | C | C | 48時間以内に開始 |
アルガトロバン | B | × | × | 48時間以内に開始 | |
脳保護薬 | エダラボン | B | B | B | 24時間以内に開始、投与期間14日以内 |
抗脳浮腫薬 | 高張グリセオール(10%) | C | C~× | C | 1~5日以内に開始 |
機械的血栓回収術の時間的な適応
内頚動脈や中大脳動脈M1部の閉塞など、主幹動脈閉塞では(様々な条件はありますが)t-PAでの血栓溶解療法に引き続き、最終健常確認から6時間以内(可及的速やかに)機械的血栓回収術を開始することが勧められます。
最終健常確認から6時間を超えた、内頚動脈や中大脳動脈M1部の急性閉塞では、神経徴候と画像診断に基づく適応判定を行い、最終健常確認から16時間以内に機械的血栓回収術を開始することが勧められます。
急性期治療後の流れ
超急性期が経過し、神経学的所見の増悪、運動負荷ができない心疾患が認められなければ、一日も早くリハビリを開始します。
最後に
脳梗塞の特徴と検査、基本の治療方法を説明しました。
これをもとに、次の項目では、目の前に脳梗塞かもしれない人がいた時に、どのようにアセスメントし、ケアを繋げていくかを説明します。
急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。
状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。
また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。
もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。