ACLSにおけるチームダイナミクス~効果的なコミュニケーション~
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- 目次
高い能力を持つ蘇生チーム
「チームダイナミクス」とは、チームが個人に、個人がチームに与える影響のことです。メンバーが他のメンバーからのサポートを得ることで、業務を遂行できる、チームの目標を達成できるといった、メンバー間の相互依存により発揮する力のことです。
蘇生現場におけるチームダイナミクスは、その時の蘇生チームの能力を最大限に発揮させ、高い能力を持つチームとして円滑に蘇生処置を行い、心停止患者の生存率を改善できるといわれています。
高い能力を持つ蘇生チームとは
では、高い能力を持つ蘇生チームとは、具体的にどのようなチームを指すのでしょうか。高い蘇生チームには、下記の要素が高レベルあることが求められます。
- タイミング
迅速なCPR、除細動、CCF80%以上
- 連携
チームダイナミクス:チームメンバーが共通の目標を目指してシームレスに協力し、各自が自身の役割について熟練している
- 管理
リーダーシップ、事前計画、追加リソースの入手、介入の調整、メンバーの割り当てなど
このとき、必ずしも気心の知れたメンバ―だけでチームを作るとは限りません。
緊急の蘇生現場ではリーダーを中心に行動し、互いにチームダイナミクスを発揮することで、蘇生処置に臨むことになります。
蘇生現場での効果的なコミュニケーション
蘇生現場でのコミュニケーションは、チームダイナミクスを念頭に意思疎通を図ることが鍵を握ります。チームダイナミクスを念頭に置いたコミュニケーションとはどのようにすれば良いのかについて説明します。
効果的なチームダイナミクスの要素
効果的なチームダイナミクスは、
-
- 役割と責任
- 伝える内容
- 伝える方法
に、大きく分類されます。
役割と責任
蘇生チームメンバーは、明確な役割と責任を持つ必要があります。チームリーダーの判断で役割を割り当てられる場合もあります。
役割を持ったら責任をもって役割を遂行します。この時、「自分の役割の限界」も認識しておくべきです。
蘇生中の意見の衝突の回避や手順と異なった行為に対しては「建設的な介入」を用いて、チームの蘇生効率を最大限に高めていきます。
伝える内容
効果的なチーム活動には、蘇生中におけるチーム間での手技や手順についての「知識の共有」が不可欠です。チームリーダーを含めた全体で共有することで、より効果的な蘇生治療に繋がります。
蘇生行為中には「要約と再評価」を行い、鑑別診断に関する判断を継続的に見直します。それによって患者の臨床症状の重大な変化に注意することも可能になります。
伝える方法
蘇生処置中のコミュニケーション手段として「クローズド・ループ・コミュニケーション」を用います。具体的には、指示内容の復唱、処置実施後に完了したことをチーム間で共有することです。そして、ひとつの指示が完了した後、次の指示を出します。
例)「アドレナリン1mg静注してください」の指示を受けた場合
「アドレナリン1mg静注します」と復唱。
処置実施後も「アドレナリン1mg静注しました」声に出して完了を共有します。
蘇生チーム間では「明確なメッセージ」を意識します。落ち着いた口調で簡潔、明瞭に伝えることで、現場の混乱をさけることに繋がります。
蘇生処置中に上下関係はなく、相互尊重が大切です。メンバー間がそれぞれを尊重し合い、協力しあうことで、チームのパフォーマンスは向上します。
さいごに
蘇生の現場に入り蘇生チームの一員になった時、みなさんはチームダイナミクスを用いて「高い能力を持つ蘇生チーム」を作れているでしょうか。
「処置に自信を持てない者」
「声を荒げて指示を出す者」
「無言で処置をする者」
「あやふやな指示」・・・
挙げればきりがありません。これでは「高い能力を持つ蘇生チーム」を作るのは難しいでしょう。
急性期ケアにあたる全てのスタッフがチームダイナミクスを理解し、慌ただしく過ぎる蘇生の現場でリーダー・メンバーの役割をしっかりと遂行できれば、きっと最大限の蘇生ができてくるのだと思います。
院内のあらゆる蘇生の現場で声を荒げることなく、明確にメッセージを出すこと、建設的に介入すること、クローズド・ループ・コミュニケーションを心がけましょう。
このブログを読んだ皆さんも是非蘇生の現場で実践してみてくださいね。
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