急性期の呼吸ケアで気を付けること【CO₂ナルコーシス】
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急性期の呼吸不全に合併することのあるCO₂ナルコーシス
患者さんが呼吸不全のうち「Ⅱ型呼吸不全」であった場合は、「低換気状態」であると考えられます。
この「低換気状態」が起こる原因は数多くありますが、多く見られるのは「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が原因で起こるケースです。
もしCOPDの患者さんに高濃度酸素を投与すると、「CO₂ナルコーシス」という呼吸抑制と血中炭酸ガスが増加した状態となってしまいます。
呼吸不全への対応は、まずフィジカルアセスメントを用い「気道の開通性」を維持しつつ呼吸を評価します。直ちに血液ガス分析ができると良いのですが、そううまくはいきません。
そこで、酸素飽和度に応じ酸素を投与することになると思いますが、酸素投与をして安心するのではなく、観察を継続しCO₂ナルコーシスを起こしていないか注意して判断しましょう。
CO₂ナルコーシスの機序、症状
機序
COPDは、患者さんに長期間の慢性的な高炭酸ガス血症状態を与えてしまう疾患です。長期間の高炭酸ガス状態に体が慣れてしまうと、呼吸を調節する中枢が血中酸素濃度に過敏になり、血中酸素濃度に反応しやすくなります。
このような状態の患者さんに高濃度の酸素投与を行ってしまうと、「酸素濃度が上がった」と中枢は感じ、呼吸を抑制する機能が働きます。こうなると低換気がさらに進行し、「CO₂ナルコーシス状態」となります。
臨床症状
CO2ナルコーシスの3主症状
CO₂ナルコーシス全体の主な症状は、以下の3つです。
- 意識障害
- 高度の呼吸性アシドーシス
- 自発呼吸の減弱
初期
特に初期には、下記の症状がよく見られます。
- 呼吸促迫
- 頻脈
- 発汗
- 頭痛
進行すると
状態が進んだ場合、下記のような症状の特徴が見られます。
- 意識レベルの低下
- 傾眠から昏睡に至る
CO₂ナルコーシスを回避する看護
CO₂ナルコーシスを恐れるあまり、呼吸不全の患者さんに「酸素投与をしない」のは誤りです。呼吸不全には、不整脈や心筋梗塞など致命的な病態を引き起こす可能性があるからです。酸素投与を行いながら観察を強化しましょう。
なかでも既往歴の聴取はとても重要です。酸素投与を行いながら患者さんが話をできるなら、COPD既往があるかどうかを聞いてみましょう。また、家族などが知っている可能性があるので、患者さんだけでなく家族からも情報を集めます。
COPDの既往があるなど、CO₂ナルコーシスのリスクが高いと考えるときは「ターゲット酸素飽和度」を利用しましょう。
GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)のガイドラインでは、COPDの急性増悪時の酸素療法におけるターゲットSpO₂を88~92%とすることを推奨しています。
CO₂ナルコーシスの徴候を見逃さないように、下記のことに気を付けるのも重要です。
- 患者さんの状態をよく観察
- 可能であれば頻回の動脈血ガス分析を実施
- アシドーシスの有無を確認する
もしも、CO₂ナルコーシスに陥ったうえに呼吸抑制や意識障害が現れた場合、非侵襲的陽圧換気(NPPV)や挿管下での人工呼吸管理が必要になります。
CO₂ナルコーシスを悪化させる原因の1つに「呼気の再吸入」もあります。これは酸素マスクなどのディバイスで起こしやすくなります。そうならないためにも、酸素投与ディバイスを「呼気の再吸入」防止できるもの(酸素カニューレや解放式酸素マスクなど)に変更するという方法も有効かもしれません。
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