呼吸不全って何だろう?
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呼吸不全とは
呼吸不全とは、何らかの原因で「動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下となること」と定義されています。
臨床の救急の現場であれば、動脈血ガス検査を使って迅速に診断することが可能です。しかし、動脈血ガス検査がすぐに行えない場合は、パルスオキシメーターを用いて診断します。その数値は、およそSpO₂が90%以下で動脈血酸素分圧60mmHg前後となります。
さらに所見としては、
- 強い呼吸困難の訴え
- 酸素投与しても十分な酸素化が困難
などが起こります。
今回は、この呼吸不全について、さらに少し深く考察してみましょう。
呼吸不全の分類
呼吸不全は、
- 急性呼吸不全
- 慢性呼吸不全
に大別されます。
そのうち、急性呼吸不全を起こす原因は、肺炎やARDS、急性肺血栓塞栓症、自然気胸などが代表的です。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎が感染症や心不全などの合併を機転に急性増悪することもあります。これらは動脈血酸素分圧の急激な低下を招きます。
臨床症状は、呼吸困難や冷汗、起坐呼吸、頻呼吸となり生命の危機となりえます。
酸素投与や補助換気、必要時は気管挿管し人工呼吸管理をすることもあります。
急性呼吸促迫症候群(ARDS)
生命を脅かすARDS
ARDSとは急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome)の略語で、単一の病気ではなく、様々な原因によって生じる症候群です。
2012年に発表された現在の定義では
- 1週間以内の経過で急に発症している
- 低酸素血症が明らかである
- 胸部エックス線やCTスキャンで両肺に異常な影がある
- 心不全や輸液負荷が原因ではない呼吸不全
とされています。
誘因となる“基礎疾患”は、肺に直接ダメージを与えるものと、そうでないものとに分けられます。
前者で頻度の高いものには肺炎や胃内容物の誤嚥があります。
後者の代表的なものは敗血症です。敗血症は、血液中に細菌そのものや細菌に由来する毒素などが入り、様々な臓器がダメージを受ける状態を指します。
ARDSを起こした肺では、基礎疾患に伴って活性化した好中球から細胞や組織を傷つける活性酸素や蛋白分解酵素が放出されると考えられています。肺胞や毛細血管の細胞がダメージを受けた結果、血液中の水分や蛋白がにじみ出て、肺胞にひどい浮腫を起こします。
慢性呼吸不全
慢性呼吸不全の急性増悪は怖い
呼吸不全の中で、
- 二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合(45mmHg以下)を
→I型呼吸不全 - 45mmHgをこえる場合を
→II型呼吸不全
と呼びます。
このような呼吸不全が1か月以上続く状態を慢性呼吸不全といいます。
慢性呼吸不全は、進行性消耗性疾患の一つです。特に、感染や体力の低下、免疫力の低下時に急激に進行し、強い呼吸困難を起こします。このような状態を慢性呼吸不全急性増悪と呼んでいます。
ある程度の治療に反応はしますが、完全に呼吸機能を改善させることは困難で、徐々に呼吸状態が悪化し死亡するケースもあります。
慢性呼吸不全を引き起こす疾患
慢性呼吸不全を引き起こす主な疾患には、下記などの肺の疾患、
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 肺結核後遺症
- 間質性肺炎
- 肺がん
下記などの神経や筋疾患があります。
- 筋萎縮性側索硬化症
- 筋ジストロフィー
- ギランバレー症候群
呼吸不全の主な定義や分類をお伝えしました。
次回は、さらに呼吸不全を詳しく説明していきます。
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