3つの事例から活かして学ぶCPR

2024年8月20日 ライブラリー

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急性期医療の現場にいると驚くような症例に多く遭遇すると思います。その時は尽くせる限りの処置を行いますが、振り返ってみて自らの対応に後悔することもあるかと思います。しかしその経験が多くの学びに繋がることもあります。今回は、次に活かすためのBLS、CPRを3つの実例から紹介していきます。

ケース1:ACS(急性冠症候群)を疑う患者からの電話対応

患者:70歳男性

①病院にて患者からの電話

辛そうな話し方をする男性から受診希望の電話がありました。
男性は「胸が圧迫されるようで苦しくて、ふらふらする。何とか動けるのでタクシーでそちらの病院を受診したい」とのことでした。
ここでACSの可能性が浮かんできます。

②救急車を呼ぶように指示

電話口で「救急車を呼んで、病院まで来てください」と伝えましたが
男性は、「救急車は近所に迷惑がかかる。タクシーに乗れば数分だから」と救急車の必要性の説明に男性は応じてくれず、電話は切られました。

③数分後の院内コール

数分後、院内コールが鳴ります。
病院スタッフより「病院前タクシー乗り場のタクシーの中で人が倒れている」とのこと
数名の看護師に声をかけAEDを持ってタクシー乗り場に走りました。
タクシーの後部座席では、男性が意識を無くしうずくまるように倒れていました。

④CPR

タクシーから男性を運び、AEDを装着するとショック適応リズムでした。
直ちにショックを行い、CPRをしながらERに入りモニター心電図を付け、12誘導心電図を記録するとやはりACSでした。

 

事例から学べること
  • ACSで亡くなる患者の約50%は、病院到着前に命を落とします。
  • →ACSを疑ったら必ず救急車の使用を促しましょう。

 

ケース2:患者がベッドにいない

患者:60歳男性
広範囲前壁心筋梗塞後で、数年にわたり治療していたが低心機能状態となっている。モニターを装着している。

①アラームが鳴る

明け方4時ごろ循環器病棟にて、セントラルモニターからアラームが鳴りました。モニターを見るとVF(心室細動)と表記され、危険度の高いものでした。

②患者の元へ

急いで他のスタッフに声をかけ、救急カートと除細動器を持って病室に向かいましたが、ベッドには患者の姿がありませんでした。

③患者発見

隣のベッドや周囲を探しましたが、見つかりません。
そのあとすぐ、他のスタッフがドリンクコーナーの自動販売機前に人が倒れているのを発見しました。
直ちにCPRを開始し除細動を行い、何とか自己心拍再開まで繋げました。

 

 

事例から学べること
  • 患者は必ずしも病室のベッドに居るとは限りません。
  • →応援要請する
  • →臨機応変にCPRと除細動を行う

ケース3:患者が痙攣した場合

患者:70歳男性

①受け入れ要請

70歳男性患者の受け入れ要請がありました。
主訴は、呼吸困難、食欲低下です。
既往歴は、脳梗塞、てんかん、右不全麻痺、失語症です。

②患者の急変

救急車で到着後、体重測定、体温測定、血圧測定、そしてモニター装着。
モニター上QRSも上向きで、HR100回/分程度の心房細動でした。
採血のオーダーをもらい採血の準備をしているとき「うううう・・・」と声を出し患者がガタガタと痙攣し始めました。

③2回目の痙攣

モニター心電図では、QRSが乱れていました。
そして30秒もせずに患者の痙攣は止まりました。
しかし、まだ採血もできていない間に、2回目の痙攣が起こります。
再び患者がガタガタと痙攣し出し、モニター波形が乱れ始めました。

④CPR開始

その時、医師が「CPR!」と叫びました。

意識がなく、正常な呼吸がなく、脈拍触知ができない(わからない)時はCPRです。
看護師らは、直ちにCPRを開始しました。
のちにこの患者はTdp(トルサード・ド・ポワント:Torsades de Pointes)という不整脈であったことが分かりました。

 

事例から学べること
  • モニターは判断基準の全てではない
  • BLSの基本は忠実に行う

 

 


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