DNARとは|DNRやADとの違いについても解説
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~2026年4月20日まで
2026年5月8日~5月24日
本記事では、DNARに関する定義や実際の指示内容や課題、アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive:AD)との違いについて分かりやすく解説していきます。
DNARの定義
日本救急医学会では、DNAR(do not attempt resuscitation)を「患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法をおこなわないこと」と示しています。回復の見込みがそう多くない中で蘇生のための処置を試みない用語としてDNARが使用されています。
DNRとの違い
1995年日本救急医学会救命救急法検討委員会にて、「DNRとは尊厳死の概念に相通じるもので、癌の末期、老衰、救命の可能性がない患者などで、本人または家族の希望で心肺蘇生法(CPR)をおこなわないこと。これに基づいて医師が指示する場合をDNR指示(do not resuscitation order)という」と定義されています。
その後、AHAガイドライン2000にて、DNRでは蘇生の可能性があるのに治療を行わないという誤解を招きやすいとの考えから、“attempt(試みる)”を加えたDNAR(Do Not Attempt Resuscitation)という用語が使用されるようになりました。
DNAR指示の具体的内容
DNARは、あくまで回復の見込みがない患者が、心停止時に心肺蘇生をしないでほしいという意思表示です。つまりは、すべての治療を中断することではなく、終末期医療と混同しないよう正しく理解する必要があります。
以下は、日本集中医学会がDNARのあり方について勧告した内容です。
勧告
1.DNAR指示は心停止時のみに有効である。心肺蘇生不開始以外は集中治療室入室を含めて通常の医療・看護については別に議論すべきである。2.DNAR指示と終末期医療は同義ではない。DNAR指示に関わる合意形成と終末期医療実践の合意形成はそれぞれ別個に行うべきである。
3.DNAR指示に関わる合意形成は終末期医療ガイドラインに準じて行うべきである。
4.DNAR指示の妥当性を患者と医療・ケアチームが繰り返して話合い評価すべきである。
5.Partial DNAR指示は行うべきではない。
6.DNAR指示は日本版POLST – Physician Orders for Life Sustaining Treatment – (DNAR指示を含む)「生命を脅かす疾患に直面している患者の医療処置(蘇生処置を含む)に関する医師による指示書」に準拠して行うべきではない。
7.DNAR指示の実践を行う施設は、臨床倫理を扱う独立した病院倫理委員会を設置するよう推奨する。
『委員会報告.日集中医誌 2017;24:208-9. Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告』より転載
ポイントは「心停止時の心肺蘇生」に限るという点です。「心停止以外の急変時」や「終末期における治療(心肺蘇生以外)」の実施を判断するものではありません。
また、DNAR指示は、指示に関与する全ての人と繰り返し妥当性を評価しながら合意形成していく必要があり、その場で決定するものではありません。
DNARの実際
しかし、実際の救急場面ではDNARが浸透・活用しているとは言えない現状があります。
第47回日本救急医学会総会・学術集会での豊﨑らの発表によると、心肺停止で救急外来に搬入される高齢患者のうち、事前のDNAR(心肺蘇生を希望しない意思)の提示が確認された割合は16.2%に過ぎないことが報告されています。また、医療機関においても、診療情報やDNARなどの情報を関係職種で共有できるようなルールやツールを作成している割合として、作成している医療機関は33%にとどまっています。そのため、国民の約6割は自宅での最期を希望しているとされていますが、実際に自宅で亡くられる方は1割程度です。
このように、実際はほとんどの方が希望とは違う形で最期を迎えていることがわかります。
アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive:AD)との違い
DNARに似た概念として「事前指示」と呼ばれるアドバンスディレクティブがあります。
アドバンスディレクティブとは、「ある患者あるいは健常人が、将来自らが判断能力を失った際に自分に行われる医療行為に対する意向を前もって意思表示すること」と定義されています。
分かりやすく言うと、人生の最終段階に、自分がどのような医療を受けたいかについて、事前に自らの希望を示しておくことをいいます。
アドバンスディレクティブは大きく代理人指示と内容的指示に分けられます。
代理人指示
患者本人が意思を伝えられなくなった場合に備え、代わりに医療方針の決定を行う人物をあらかじめ指定しておくものです。
内容的指示
本人が望む治療内容や医療方針を記した文書で、一般に「事前指示書」とも呼ばれます。類似概念である「リビングウィル」なども、この内容的指示に含まれます。
DNARは、アドバンス・ディレクティブの中でも、この内容的指示として位置づけられます。
内容的指示の例)
・呼吸状態悪化時に気管挿管を行わない(Do not Intubate:DNI)
・腎機能が悪くなっても透析を行わない
・最後まで家で過ごす
まとめ
いかがだったでしょうか。DNARは「心停止時に心肺蘇生を行わない」という明確な意思表示であり、終末期医療の中止や治療拒否とは異なります。患者の尊厳を守るためにも、日頃からチームで話し合い、価値観を共有することが重要です。学びを明日からのケアに活かしていきましょう。
参考
1)日本集中治療医学会. DNARに関する提言. 日本集中治療医学会. 2017. https://www.jsicm.org/news/upload/170316JSICM_dnark.pdf 最終アクセス日:2025年10月9日
2)日本救急医学会. DNAR. 日本救急医学会 医学用語解説集. 2025. https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0308.html 最終アクセス日:2025年10月9日
3)日本集中治療医学会. DNAR確認書(案). 日本集中治療医学会. 2017. https://www.jsicm.org/news/upload/170316JSICM_dnarkan.pdf 最終アクセス日:2025年10月9日
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