その頭痛、経過観察でいいのでしょうか➀
記事執筆:
- 目次
頭痛の原因には何がある?
「頭痛」と一言にいっても要因はさまざまです。
頭痛患者の約80%は良性の頭痛で、最も多い頭痛は「緊張性頭痛」、その次には「片頭痛」が多いといわれています。そして、頭痛全体の2~3%が、くも膜下出血などの重症疾患が原因といわれています。いずれにしても、良性タイプか重症化タイプかの鑑別・初期対応が命を救う分かれ目となります。
頭痛のタイプ
頭痛のタイプは、一次性(機能性)頭痛と二次性(症候性)頭痛の大きく2つに分類されます。
一次性頭痛
➀緊張性頭痛
②片頭痛
③群発頭痛
④三叉神経痛
⑤後頭神経痛
⑥その他
二次性頭痛
➀頭頸部外傷に伴う頭痛
②頭頸部血管障害に伴う頭痛(くも膜下出血、脳出血、小脳出血、脳動脈解離など)
③非血管性頭蓋内疾患による頭痛(感染、腫瘍、頭蓋内圧亢進など)
④中枢神経系感染症による頭痛(髄膜炎、脳炎、脳腫瘍)
⑤頭蓋内異常による頭痛(低髄液圧症候群、特発性頭蓋内圧亢進症)
⑥頭蓋外疾患による頭痛(緑内障、副鼻腔炎、帯状疱疹、側頭動脈炎など)
一次性(機能性)頭痛が圧倒的に多く、慢性の反復性を有する経過をたどる場合が多くみられます。
二次性(症候性)頭痛は脳神経疾患の場合が多いですが、眼科系疾患、副鼻腔系疾患、皮膚神経疾患などもあるため、慎重に広い視野で情報収集を行うことが必要です。
緊急性の高い頭痛を見逃すな!
頭痛の多くは経過観察でも問題はありませんが、その中に見逃してはいけない危険な頭痛が隠れています。
では、どのように「見逃してはいけない頭痛」を見つけたらいいのでしょうか?
緊急性の判断ポイント
頭痛
▼
第一印象の観察(話ができるか・表情など)
▼
A(気道)B(呼吸)C(循環)D(意識レベル)E(体温)の確認
▼
「頭痛」以外の追加情報を集めよう!
・バイタルサインの確認
・意識レベル、麻痺の有無、瞳孔・対光反射、目の見え方、項部硬直の有無
・一次性(機能性)頭痛の既往、薬剤の内服歴の確認、高血圧の有無、同様の症状の発症歴など
・「 今までに経験したことのない頭痛 」というフレーズは要注意!
問診のポイント
頭痛のある方に、矢継ぎ早に質問しすぎないように配慮しましょう。
問診内容 | 質問のしかた |
発症様式・経過 |
「いつから、どのように痛みが起きましたか?」 「痛みの前に、何かきっかけはありましたか?」 |
部位・程度 |
「どのあたりが強く痛みますか?」 「痛みの部分はどこですか? 場所は移動しますか?」 「最大の痛みが10とすると、今はどれくらいですか?」 「今までに、同様の痛みを経験したことはありますか?」 |
性状・持続性 |
「持続的に痛みますか? 軽減することもありますか?」 「ドクドクするような痛みですか?」 「痛みは、どれくらい続いていますか?」 |
随伴症状 |
「悪心・嘔吐はありますか?」 「首や肩の痛みはありますか?」 「目の見えにくさ、めまいなどはありますか?」 「片側の流涙、鼻汁などはありますか?」 「意識が遠のく、ぼーっとするなどはありますか?」 「手に力が入らない、立てない、喋りにくいなどはありますか?」 |
初期対応
➀安静が保持できる環境と体位の確保
⇒騒がしい場所は避けて、横になれる(または座って待機できる)場所の確保を行う
②生命の危機に至らないかの判断に集中する
⇒意識レベルの低下がないか、嘔吐による誤嚥の予防、気道確保の準備、血圧の異常値がないかの確認など
医師への報告、救急隊への報告のポイント
「ただの頭痛ではない」というポイントを上手く伝えよう!
問診で得た情報、バイタルサインの値、ABCDEの評価を行い、情報を整理して「I-SBAR-C」を活用して報告してみましょう。
I(報告者・対象者の同定):報告者の氏名・患者氏名、部屋番号など
S(状況):患者に起きている状況のとりあえずの結論または主訴
B(背景):バイタルサインを含めた評価とSに関する情報、臨床経過
A(評価):状況評価の結論(得た情報を基にどう判断したか)
R(提案):具体的な要請内容、何をしてほしいか明確に告げる
C(口頭指示の復唱確認):指示が間違いないか復唱して確認
CALL OUT(コールアウト)の活用
報告のポイント
➀内容はだらだら言わず、重要な単語だけを大声で発信する
②活用状況は重要事項を全員に同時に伝えるべき危機的状況
③周囲の人に協力を求める緊急事態で決まった相手に確実に伝える場合
④目的はメンバーが次にとるべき行動を予測する材料になること
⑤行動をとるべき個人に責務を果たすよう明確に指示すること
次回は、事例を用いて実際の観察方法、報告の仕方を説明します。
急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。
状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。
また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。
もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。