くも膜下出血の急性期看護

2025年1月21日 ライブラリー

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目次

くも膜下出血とは

くも膜下出血とは、主に脳表面の血管病変の破綻により、くも膜下腔へ出血が生じた病態のことを言います。

原因

主な原因として、「脳動脈瘤の破裂」と「脳動静脈奇形の破裂」があります。

①脳動脈瘤の破裂

くも膜下出血における原因の80%以上を占めます。中高年~高齢者の女性に好発します。

②脳動静脈奇形の破裂

特に、脳動脈瘤の破裂の場合は急速で重篤な経過を辿ることが多く、死亡や重度後遺症を残す割合が高いです。若年者の男性に好発します。

脳動脈瘤の好発部位

脳動脈瘤のうち、90%は内頚動脈の灌流域ウィリス動脈輪の前半部分)に形成されます。代表的な部分は以下の3つです。

  • 前交通動脈(Acom)
  • 内頚動脈―後交通動脈(IC-PC)分岐部
  • 中大脳動脈(MCA)分岐部

症候性脳動脈瘤について

脳動脈瘤の中には、破裂前に動脈瘤が大きくなり、脳神経を圧迫することにより特徴的な症状が出現するものがあります。特徴的な症状について表にまとめました。

これらの症状は片目に急激に発症するというのが、脳動脈瘤の早期発見のヒントになります。このような症状がみられれば早急に専門医を受診しましょう。

脳動脈瘤の部位 圧迫される神経 症状
内頚-後交通動脈(IC-PC)の分岐部 動眼神経 複視・眼瞼下垂・散瞳
内頚-眼動脈(IC-Oph)分岐部 視神経 視力・視野障害
内頚動脈海綿静脈洞部 動眼神経 複視・眼球突出・拍動性の耳鳴り・頭痛
外転神経

くも膜下出血の基本の検査~治療

くも膜下出血の治療には、血圧コントロール、疼痛コントロールなどの内科的治療と手術、血管内治療(コイリング術)またはクリッピング術などの外科的治療があります。

治療時の注意するポイント

  • ①再出血を防ぐ

    発症して24時間以内に起こすことが多く、再出血を起こした場合は死亡率が高まる

  • ②脳ヘルニアを見逃さない

    GCS合計8点以下、2点以上の低下、JCSⅡ-30以上、瞳孔不同・片麻痺・クッシング現象(高血圧を伴う徐脈)

  • ③脳血管攣縮を防ぐ

    くも膜下出血を起こした後、3日~2週間の間に起こる(ピークは8~10日)

  • ④正常圧水頭症の早期発見

    数週~数か月後に起こる(認知症・尿失禁・歩行障害)

緊急性の判断ポイント

①第一印象の観察

話が出来るか、表情はどうかなどを確認しましょう。

②ABCDEの確認

A(気道)B(呼吸)C(循環)D(意識レベル)E(体温)を確認します。

③追加情報を集めよう!

バイタルサインの確認、血圧の左右差が無いか、は両手でチェック

・「急な頭痛」「バットで後頭部を殴られたような痛み」などのエピソードの有無

・悪心・嘔吐・痙攣などを起こす可能性が高い

・脳卒中が疑われる場合は、シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)、ELVOスクリーンNIHSSMMTで評価する

意識レベル(AIUEOTIPS)、麻痺の有無、瞳孔対光反射の見え方、頸部硬直の有無

脳ヘルニアのサインが無いかをチェックする
(GCS合計8点以下、2点以上の低下、JCSⅡ-30以上、瞳孔不同・片麻痺・クッシング現象)

・薬剤の内服歴の確認、高血圧・心房細動・脂質異常症・喫煙歴・アルコール摂取歴など

・同様の症状の発症歴(SAMPLE法

低血糖の有無

発症時間の確認(「最後に元気だった時間」の確認)

検査

確定診断するために、下記の検査を行うとよいでしょう。

  • 頭部CT

    出血の有無が分かる、ヒトデ型の特徴的なCT画像あり

  • 心電図・心エコー、胸部・腹部レントゲン、採血など
  • 可能な範囲での髄液検査

    CTで脳出血が分からない場合に検討する

急性期治療

①術前管理(再出血・脳ヘルニアを防ぐ)

・血圧管理:降圧薬
・頭蓋内圧管理:抗浮腫薬(浸透圧利尿薬:濃グリセリン・マンニトール)
・鎮痛、鎮静:気管内挿管・人工呼吸器管理のために使用
・痙攣時:抗けいれん薬の使用

②手術:再出血の予防だけでなく、血腫除去により脳血管攣縮の予防も視野に入れる

動脈瘤クリッピング術(開頭する)
動脈瘤コイリング術(開頭しない)

③術後管理:脳血管攣縮による脳虚血(脳梗塞)を防ぐ

  • トリプルH療法

    循環血液量増加療法(hypervolemia)・高血圧療法(hypertension)・血液希釈療法(hemodilution)を組み合わせて行う。それぞれの頭文字をとってトリプルH療法と名付けられている。

  • ドレナージ療法

    脳室ドレナージ(頭蓋内圧コントロール)・脳槽ドレナージ・腰椎ドレナージ・皮下ドレナージ

急性期治療後の流れ

超急性期が経過し、神経学的所見の増悪・運動負荷ができない心疾患が認められない場合、ドレーンなどが入っていても、一日も早くリハビリを開始します。

<参考文献>

急性期ケア専門士 公式テキスト|第1版
日本急性期ケア協会

病気がみえるVol.7|第1版
脳・神経 メディックメディア

これならわかる!救急・急変看護の基本|初版
ナツメ社

Time is Brain 脳卒中患者を救え!~脳卒中「8つのD」を紐解く ~
日本急性期ケアセミナーPro to

 

 


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