心電図で心室細動(VF)を見るポイントとVF出現時の対応アルゴリズム

2025年12月23日

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突然、心肺機能が低下、消失する代表的な不整脈が心室頻拍(VT)・心室細動(VF)です。

このうち、この記事では心室細動(VF)の特徴・心電図波形、分類、出現時の対応、アルゴリズムの流れについて解説します。

いざという時に命を守る行動につなげられるよう、理解を深めておきましょう。

心室細動(VF)の原因は?

VFの最も典型的な原因は心筋虚血です。実際、VFを呈する患者の多くは基礎心疾患を有しており、その代表が虚血性心疾患である急性心筋梗塞です。

このほか、

・遺伝的素因(先天性QT延長症候群やブルガダ症候群など)

・薬剤性要因(抗不整脈薬、向精神薬などの血中濃度上昇)

・電解質異常(重度の脱水や腎機能障害による電解質異常:カリウムやマグネシウム、カルシウムは心臓の電気的活動を担う)

が要因として挙げられます。しかし頻度は少なく、主因は心筋虚血とされています。

心室細動(VF)の発生メカニズム

虚血によって心筋細胞の電気的安定性が失われると、心室内に複数のリエントリー回路(電気信号のループ)が形成され、電気信号が無秩序に旋回することで心筋が同期して収縮できなくなります。

その結果、心室細動が出現します。

心室細動(VF)の心電図波形

VFの心電図波形の典型的な特徴は、不規則で細かく揺れている波形です。

心室全体のまとまった収縮は消失し、見た目には心室が細かく震えているようにみえます。臨床的には、心音は消失して心拍出が止まる、心停止の状態です。

VFは、QRS波、ST部分、T波などの区別ができないほどに不規則な振幅と波形が特徴です。

心室頻拍だった波形が、 矢印のところから心室細動に変わっていることが分かります。

ここがポイント!

・全く不規則な振幅並びに波形を呈する

・QRS波、ST部分、T波などの区別ができない

・基線が不規則に揺れている

・出現時には波が300/分以上ある

ことで診断に至ります。

主な症状

JRC蘇生ガイドライン(2020)によると、VFの臨床像として

・意識消失

・痙攣

・呼吸停止

・脈拍触知不能

の4つの症状が典型とされています。

その他、皮膚の蒼白化、冷感、発汗も挙げられます。

発症直後は突然の意識障害やけいれんを起こし、数十秒から数分で呼吸も停止に至ります。脈も触れなくなり、極めて急激に進行するのが特徴です。

ここからは、VF出現時の対応についてフローチャートを用いて確認していきます。

成人のVF出現時のアルゴリズムとフローチャート(このH2は図も説明も急性期ケア専門士テキストから引用しています。)

・VF/無脈性 VT 治療パス

① 患者の心停止を認識後すぐにCPRを開始、モニター/除細動器を装着する。

② リズムチェックでVF/pulseless VTを認識。

③ 安全確認し、除細動を実施する。二相性の除細動器の場合、初回エネルギー量は120〜200Jで、製造業者の推奨値とする。不明な場合はエネルギー量を最大値にする。2回目以降のエネルギー量は初回と同等とし、より大きなエネルギー量を考慮してもよい。単相性の除細動器の場合、エネルギー量を360Jとする。

④ ショック後はすぐにCPRを再開する(2分間CPR実施)。その間に静脈路(または骨髄路)の確保を行う。2分経過後にリズムチェックを行う。

⑤ リズムチェックでVF/pulseless VTが持続している場合、2回目の除細動を実施。⑥ ショック後はすぐにCPRを再開する(2分間CPR実施)。アドレナリンを3〜5分ごとに投与。気管挿管などの高度な気道確保器具、呼気CO₂モニターの使用を検討する。2分経過後にリズムチェックを行う。

⑦ リズムチェックで VF/pulseless VT が持続している場合、3回目の除細動を実施。

⑧ ショック後はすぐに CPR を再開する(2分間 CPR 実施)。アミオダロンまたはリドカインの投与。

治療可能な原因を治療。

2分間 CPR 実施後のリズムチェックで VF/pulseless VT が持続している場合は、⑤から続く。

⑫ リズムチェックで除細動適応でない波形の場合、自己心拍再開(ROSC)の徴候がない場合は、PEA/Asystole のアルゴリズムへ移行する。

治療について

VFの治療と、救命後の治療経過について解説していきます。

除細動・心肺蘇生(CPR)

VFの救命において最も重要なのは、“いかに早くCPRと除細動を開始できるか”です。JRC蘇生ガイドライン(2020)でも、CPRと並んで除細動が第一選択として示されています。

抗不整脈薬

初回の電気的除細動でVF/pulseless VTが持続する場合には、アドレナリンおよび抗不整脈薬の投与が考慮されます。

PEA(心停止)/asystole(心静止)でショック非適応の場合は速やかなアドレナリン投与を行いますが、VF/pulseless VTでは、薬物はあくまで「除細動+CPR」に続く補助的な位置づけです。

植込み型除細動器(ICD)

VFからの生存例には、植込み型除細動器(ICD)が推奨されています。しかし、ICDは不整脈出現後の対応しかできないため、通常、薬物および植え込み型除細動器(ICD)の植え込み治療が基本です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

心室細動(VF)は致死的な不整脈の一つであり、ただちに除細動を含む蘇生処置が必要です。いざというときに慌てることがないよう心電図をしっかり学習しておきましょう。

 

急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。

状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。

また、病院だけでなく地域医療に携わる看護師や医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。

もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。

 

参考

 

 


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急性期ケア専門士とはHP画像

状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。

また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。

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