緊急度判定「これはやばい!」をキャッチする!⑤~中枢神経 編~
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「何か変」「いつもとちがう」に気づくこと、観察したことを言葉にできること。
初期対応の基本は、学ぶことで習得できます。
緊急性の見極め方、そのコツについて皆で学ぶ『緊急度判定』シリーズ。
第5回は「中枢神経の評価」についてお伝えします。
- 目次
前回までは、気道・呼吸・循環動態を評価してきました。
今回は、中枢神経の評価をしていきます。
中枢神経は、気道・呼吸・循環の影響を強く受ける
突然の頭痛、片麻痺、上下肢の脱力、感覚障害、歩行困難、発語障害など、明らかに脳自体の損傷、つまり脳卒中が疑われる場合は意識レベルの評価が必須となります。
また、低酸素・循環不全などといった脳自体が起点となる病気以外でも、二次障害的な影響で意識の障害(具体的には、不穏、攻撃的な態度、意識の低下など)が起こることもあります。
どちらの場合も、意識障害の有無と程度の評価には、GCSまたはJCSを用います。
意識障害の評価指標は、苦手な方も多いかもしれません。
ここで、評価の練習をしてみましょう!(GCSで練習しましょう)
評価の練習(GCS)をしてみよう
GCSやJCSで評価することに慣れると、医師や救急隊への報告もスムーズに行え、緊急事態であることを伝えやすくなります。
ぜひ、日ごろから練習しておきましょう。
事例➀
看護師が「おはようございます。ここがどこか分かりますか?私は誰か分かりますか?」と尋ねると、閉眼していたが、
開眼し、「おはようございます。ここは・・・・家?あなたは・・・・娘か?」とあいまいな返答でした。指示動作は可能です。
GCSで評価すると?
事例②
離床センサーが反応したため訪室すると、ベットサイドで仰向けに転倒していた。
「〇〇さん分かりますか?」と肩を叩きながら声をかけたが、「うーん、うーん」と、うっすら開眼し、うなり声をあげるだけである。
指示動作は難しく、痛み刺激を加えると右上下肢のみ辛うじて動かせている。
GCSで評価すると?
意識が悪い=脳卒中…ではない場合も!
意識障害があり、なおかつ、片麻痺があれば、「脳の病気かもしれない!」と思うのが普通ですが、そうではない場合があるのです。
それは、「低血糖」です。
低血糖の場合、意識障害を起こした上に、片麻痺が出現する場合があります。
もし、血糖測定器が手元にある場合は、評価と同時にチェックをしておきましょう。
脳ヘルニアを見逃さない!
A(気道)B(呼吸)C(循環)の問題が改善されても、意識レベルが改善しない、呼吸がおかしい場合は、脳自体の損傷を疑います。
脳自体に損傷の疑いがある場合は、一刻も早く治療に繋げなければなりません。
切迫する脳ヘルニア徴候
下記の場合は「切迫する脳ヘルニア徴候」を疑います。
GCS 8点以下、またはJCS 30以上
もしくは、経過観察中にGCS 2点以上の低下
瞳孔不同がある場合
クッシング徴候(高血圧を伴う徐脈)
これらの症状が見られる場合は、緊急処置または救急搬送を行います。
最後に
脳の損傷が起きると、身体の障害、高次脳機能障害など、その後の人生が全く違うものになってしまいます。
脳自体の病気以外での脳の損傷を食い止める、または、最小限にするためにも、素早いアセスメントと適切な治療に繋げて頂ければと思います。
次回は『体温・外観』の評価をお伝えします!
【評価の練習】の答え
事例①
GCS:13点 E:3 V:4 M:6
ちなみにJCS:1-2
事例②
GCS:8点 E:2 V:2 M:4
ちなみにJCS:Ⅱ-30