ACLS(二次救命処置)~質の高いCPRから自己心拍再開後のケア

2024年10月24日 ライブラリー

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目次

AHA(アメリカ心臓協会)の心肺蘇生アルゴリズム

ACLS(二次救命処置)とは、心停止患者の対応の1つです。一次救命処置(BLS)の後に行われる処置で、主に病院などの医療機関で実施されます。

ガイドライン

AHA(アメリカ心臓協会)では、5年ごとに様々な蘇生に関するデータを集約し「心肺蘇生のGuideline(ガイドライン)」を全世界に発表しています。

現在、本邦で行われている心肺蘇生は、ほぼAHA(アメリカ心臓協会)のG2020に準じて行われています。AHA(アメリカ心臓協会)のG2020を読んでいきましょう。

AHA(アメリカ心臓協会)のG2020

G2020では「救命の連鎖」という言葉が出てきます。

この「救命の連鎖」が緊急事態にスムーズに行えると蘇生率が高くなると考えられています。

CPRおよびECCのガイドラインより引用

「救命の連鎖」は6つの輪で説明されています。

さらに心停止が起きた場所により

  • IHCA(病院内での心停止)
  • OHCA(屋外など医療施設外での心停止)

に分けられています。

IHCA(病院内での心停止)の対応

IHCAでの最初の輪は、「早期認識及び予防」です。

院内にRRT(Rapid Response Team:急変に対応する初動チーム)やRRS(Rapid Response System:院内での急変をいち早く察知し、救急対応するときのシステム)、MET(Medical Emergency Team:救急救命センター所属医師と看護師からなる救命チーム)などの早期介入システムがあれば早期の認識や心停止の予防ができるかもしれません。

そこから「救急対応システムへの出動要請」、「質の高いCPR」へと続きます。

また、病院内ならではの「高度な蘇生」の項目が質の高いCPRと心拍再開後の治療の間に入っています。

OHCA(屋外など医療施設外での心停止)の対応

OHCAでの最初の輪は、「救急対応システムへの出動要請」です。そこから「質の高いCPR」へと続きます。

どちらの場合にも共通する項目

IHCAとOHCAのどちらにも共通する項目は

  • 救急システムへの出動要請
  • 質の高いCPR
  • 除細動
  • 心拍再開後の治療
  • リカバリー

です。

質の高いCPR

OHCAとIHCAどちらにも共通する重要な手技の一つに「質の高いCPR」があります。CPRとは、蘇生に関する全ての手技と考えられていて、主に胸骨圧迫、換気などになります。

また、CPRの質に重要な概念としてCCF(Chest Compression Fraction)があります。

CCFは全蘇生行為中に傷病者が受けた胸骨圧迫の時間の割合のことです。訓練を積んだ蘇生チームでは、CCFが80%を超えるパフォーマンスを示すこともあるそうです。

具体的な方法については過去のブログ記事「質の高いCPRとは」で詳しく解説していますので、ご覧ください。

 

自己心拍再開後のアルゴリズム

自己心拍再開後のアルゴリズムはAHA(アメリカ心臓協会) G2020に記載されています。内容を見ていきましょう。

ROSC達成

気道を確保する

気管チューブの早期挿管

呼吸パラメータを管理する

10回/分の人工呼吸を開始

SpO₂ 92~98% PaCO₂ 35~45mmHg

血行動態パラメータを管理する

収縮期血圧>90mmHg 平均動脈圧>65mmHg

12誘導心電図を記録

次の場合には緊急心臓治療を検討する

・STEMIが認めれれる

・不安定な心原性ショック

・機械的循環補助が必要

指示に従うか?

→いいえ⑥昏睡

・TTM

・頭部CTを撮影する

・EEGモニタリング

・そのほかの集中治療処置

→はい⑦覚醒

そのほかの集中治療処理

迅速に治療可能な病因を評価して治療する

継続的管理について専門医に相談する

AHA ACLS 2020 プロバイダーマニュアル 日本語版p.153より引用

②気道・呼吸・血圧の管理

自己心拍再開(ROSC:Return Of Spontaneous Circulation)が得られた場合、まずは、気道・呼吸・血圧の管理に入ります。

気管内挿管や人工呼吸の開始、酸素投与、低血圧に対する輸液負荷及び昇圧剤の検討を行います。

③12誘導心電図、④緊急心臓治療の検討

12誘導心電図を記録し、緊急心臓治療が必要か検討します。まずは下記に当てはまるかを確認します。

  • STEMI(ST-segment Elevation Myocardial Infarction:ST上昇型心筋梗塞)の有無
  • 不安定な心原性ショックの有無
  • 機械的循環補助が必要か

1つでも当てはまる、もしくは発症が強く疑われる場合は、PCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈インターベンション)や機械的補助循環を考慮しましょう。もし、自施設でPCIが実施できない場合は、可能な施設への搬送も検討します。

⑤指示に従えるか

次に、患者が口頭での指示(離握手や開閉眼など)に従えるか確認します。耳が聞こえない場合はジェスチャーで指示を出します。

指示に従えない場合は、昏睡と判断しTTM(Targeted Temperature Management:目標体温管理)を行います。24時間以上の維持目標体温は32℃から36℃で設定しましょう。

併せて、頭部のCT撮影や脳波のモニタリングなどを行いながら集中治療を行っていきます。

救命救急の実際の現場

私は、多くの心肺停止患者に遭遇しCPRを行ってきましたが、臨床の現場ではCCFを測定したことはありません。

いいわけですが「人手が足りなくて……」トレーニングではCCF80%以上は取れています。 AHA(アメリカ心臓協会)は、「実際の現場でCCFを測定し、ディブリーフィングを行い改善する」とされています。

今後は、私自身も訓練だけでなくCCF測定を少し考えたいと思いました。

 

 


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