人工呼吸器の種類と使い分け:IPPVとNPPVの違いとは
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人工呼吸とは
前回は呼吸療法の種類について説明しましたね。
酸素療法(HOT)どれを選択する?
今回は人工呼吸について掘り下げていきたいと思います。
人工呼吸器は、ガス交換臓器ともいわれる肺が、その機能を果たさなくなった時に、それを代行または補助する医療機器です。機能を果たさなくなった時というのは、例えば、呼吸がない時、呼吸が正常でない時が挙げられます。
人工呼吸器は生命維持装置の一つであるため、その取扱い・保守管理を適切に行う必要があります。それを怠ると患者に致命的な傷害を与える危険があるため、十分に注意が必要です。
それでは、そんな「人工呼吸器」について、さらに深く知っていきましょう。
人工呼吸の分類
人工呼吸の方法は次のように分類されます。
①用手的人工呼吸
- BVM(バッグバルブマスク)
- ジャクソンリース回路
②機械
- IPPV(invasive positive pressure ventilation:侵襲的陽圧換気)
- NPPV(non-invasive pressure ventilation:非侵襲的陽圧換気)
このように様々な種類がある人工呼吸器ですが、用いる場面や管理の仕方に違いがあります。それぞれどういった違いがあり、どのように使い分けるのでしょうか。
IPPVと NPPVの違い
IPPVとNPPVの決定的な違いは、患者への侵襲があるかないかです。
- IPPV(侵襲的陽圧換気)
気管内挿管や気管切開を伴う
- NPPV(非侵襲的陽圧換気)
マスク換気
アメリカ心臓協会(AHA)の見解によると、気管内挿管が必要な場面は
- 長時間の換気が必要な場合
- 移送が必要な場合
- 自力で気道の開通性が維持できない場合
- 食道と気道を分離する必要がある場合
とされています。
今日、本邦では、「侵襲的な処置は最後の手段」と考えられつつあります。救急や緊急事態の現場では、あまり時間をかけられませんが熟考することが必要です。
続いて、IPPV・NPPVのどちらにも、メリット・デメリットがあります。
これらを踏まえ、患者にはどれが効果的なのか判断していく際の参考にしてみてください。
IPPVについて
・確実に気道確保ができる
・細かい設定ができる
・気道内吸引が容易
・誤嚥の可能性が低い
・呼吸・循環管理がしやすい
・気管内チューブ・吸引により苦痛が伴う
・場合によっては鎮静剤が必要
・感染のリスクが高まる
・気道・口腔粘膜損傷の可能性がある
・コミュニケーションがとりにくい
・活動に制限がでてしまう
NPPVについて
・気管チューブによる人工呼吸の合併症を回避できる
・鎮静を行う必要性が大幅に減少する
・IPPVよりもコミュニケーションがとりやすい
・飲食も可能
・確実な気道確保ができない
・マスクを使用するためリークが多くなってしまう
・効果的な吸引ができない
・誤嚥のリスクがある
人工呼吸器の設定
人工呼吸器のパラメーターには多くの情報が表示されていますね。設定もたくさんありますが、ここでは1つずつ設定項目を見ていきます。
換気モード
換気モードとは、人工呼吸器が患者さんの肺にガスを送る方式・様式のことです。患者の自発呼吸の有無、換気を量や圧力により規定されています。代表的な換気モードとして下記が挙げられます。
- A/C
強制換気主体
- SIMV
自発呼吸とシンクロ
- PS/CPAP・SPONT
自発呼吸を補助
1回換気量(VT)・1回吸気圧(Pinsp)
一回換気量とは1回の呼吸運動で出入りするガスの量のことです。患者の体格および肺の傷害度を考慮して決定します。
換気回数
1分間の呼吸回数のことです。適正なPaCO2が得られるよう換気回数を決定します。
吸入気酸素分画(濃度)
吸入時のガスに含まれる酸素の割合のことです。急性呼吸不全・慢性呼吸不全の急性増悪など、患者の病態に合わせた酸素濃度に設定します。
プレッシャーサポート圧
患者が自発呼吸を行うのをサポートしたい場合は、プレッシャーサポートという機能を付けられます。プレッシャーサポート圧は、その送気する圧力を設定します。
PEEP
呼気の終了時、一定の陽圧をかけたままにするのがPEEPです。気道内圧の上昇による肺胞容量の増加効果と虚脱した肺胞の再拡張をサポートする役割があります。
アラーム
緊急度により、緊急アラーム・注意喚起アラーム・アラームリマインドの3種類があります。設定値は「自分の対応できる限界値」を考えて設定しましょう。決して「患者の生命の限界値」にしてはいけません。
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