緊急度判定「これはやばい!」をキャッチする!⑥~体温・外観評価 編~
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「何か変」「いつもとちがう」に気づくこと、観察したことを言葉にできること。
初期対応の基本は、学ぶことで習得できます。
緊急性の見極め方、そのコツについて皆で学ぶ『緊急度判定』シリーズ。
第6回は「体温・外観の評価」についてお伝えします。
- 目次
気道・呼吸・循環・中枢神経を評価しました。
最後は体温と外観の評価をしていきます。
体温管理を侮るなかれ!
体温の恒常性
人間は体温を37度前後に保っています。
どのような流れで保たれているかというと、脳内にある視床下部が温度を感知し、周囲の環境に応じて、一定の体温に保てるように指示を出しています。
このセンサーは、0.01度の温度変化を感知することができると言われています。
脳から指令を受けると、汗腺、血管、筋肉、内分泌腺の4つを使って体温を調整します。
皮膚温や血液の温度が上昇すると、脳からの指令で全身におよそ230万個あるといわれる汗腺から汗が出ます。
また、皮膚にある血管が拡張し、カラダの深部の熱がより多く表層(皮膚)へと運搬されて深部体温を一定に保とうと働きます。
一方、皮膚温や血液の温度が低下すると、皮膚にある血管は逆に収縮し、熱が逃げないようにします。
すると、脳が筋肉を震えさせて体温を上げようとします。
寒い時にカラダが震えるのはそのせいですね。
なぜ体温は一定に保たれているのか?
では、なぜ体温を一定に保つ必要があるのでしょうか。
それは、食べ物をエネルギーに変える「酵素」の働きを効率よく行うためです。
体温が、34℃以下・43℃以上では、生命の危機に陥ると言われています。
高体温症や低体温症には、迅速な対応が必要!
高体温が持続する場合
高体温が持続すると、体内での酸素需要が高まり、脳への酸素供給量が低下します。その結果、ABCDの変調を増悪する可能性があります。
高体温を確認した場合は、すぐに冷却しましょう。(ただし、シバリングを起こしている場合は保温を優先します。)
低体温が持続する場合
低体温が持続すると、末梢血管収縮・悪寒戦慄・筋硬直などにより、ABCDの評価が難しくなります。
低体温を確認した場合は、保温または復温が必要となります。
どんな状況でも正しい評価を行うために
体温計が手元にない場合でも、「診て・聞いて・触って・嗅いで」の基本に戻り、手足や頸部、体幹などに触れ、体温を確認する事はできると思います。
また、高齢者は自覚症状が乏しい場合もあります。
乳幼児に関しては、自力でその場所から移動できず、発見が遅れるなどの場合もあり、全身の評価と周囲の環境の様子を把握して迅速な対応が必要です。
同時に外観の評価も!
外観の評価
命に関わる部分を早急に、同時進行で評価していきながら、体温・外観も、体に触れながら確認していきます。
明らかに外傷が見られる場合、
* 出血している
* 骨折している
* 打撲跡が見られる
上記のような場合は、その外傷の重症度に応じて初期対応をしていきます。(時間差で、打撲跡などが出てくる場合もあります)
一番注意したい場面は、発見時にはわからない外傷が予測される場合です。
抗凝固剤などを内服している方が、時間差で打撲跡や頭蓋内出血腹腔内出血などが出現する、などが考えられます。
現在内服している薬や点滴中のメニューの確認も重要となります。
周囲の環境にも評価のヒントがある
転倒している場面に遭遇した場合は、周囲の環境も確認しましょう。
例えば、ベット柵に血液がついている、タンスやポータブルトイレの位置がずれている、机の角がへこんでいるなど、おそらく接触したであろう物の確認も外傷を予測するヒントになります。
初期対応を終えた後は、低体温の予防のため、衣服を整える、布団などで保温しておくことも大切です。
最後に
以上で、ABCDE評価のポイントをお伝えしました。
日々のケアに、ぜひ活用して頂けると嬉しいです。
急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。
状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。
また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。
もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。