この人の意識レベルはどう評価すればよい?~高次脳機能障害~

2024年1月24日 ライブラリー

記事執筆:

”意識レベルの評価”にフォーカスを当てた「この人の意識レベルはどう評価すればよい?」シリーズ。第1講目は、高次性脳機能障害の評価をテーマにお伝えします。

目次

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意識レベル清明でない、この人の意識はどんな状態?

意識はあるけどクリアではない…。この判断、とても難しいですよね。
目の前の人が意識レベル清明でない場合の判断は、とても迷います。しかし、この判断を誤って対応すると、状態を余計に悪化させてしまう場合があります。

私自身も幾度となく経験しましたが、夜勤中に、この対応が上手くいくか、いかないかで、その日の忙しさに雲泥の差が出るなと思っていました。

救急対応で必須となる意識レベル判定

意識レベルの評価のポイント!時系列でみる!

ポイントは、その時間帯の意識レベルだけに注目するのではなく、

・一日を通しての意識レベルの変動
・バイタルサイン
・検査データー
・内服薬の種類など

これらの様々な情報を統合してアセスメントする必要があります

ここで、それぞれの病態と特徴について振り返ってみましょう。

高次脳機能障害とは

「高次脳機能障害」は、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれます。これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立しておらず早急な検討が必要です

その診断基準をご説明します。

Ⅰ.主要症状等

1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。

2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。

Ⅱ.検査所見

MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。

Ⅲ.除外項目

1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。

2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。

3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。

Ⅳ.診断

1. I〜IIIをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。

2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。

3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

なお、診断基準のIIIIを満たす一方で、の検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である、と言われています。

入院患者の意識レベルの評価も、時系列でみる!

例えば、脳卒中の病棟に入院している患者さんたちのほとんどは、「高次脳機能障害」が見られ、なおかつ、急な入院、点滴や尿道カテーテル、麻痺により体動制限がある、モニターなどの機械音、環境の急激な変化がある、などによるストレス、脳損傷という侵襲により「せん妄」を起こしやすい状態になっている場合が多いです。
そして、既往に「認知症」がある場合は、その症状も混在している場合がある、という状態が考えられます。

入院直後、3日目、1週間後、2週間後、など経過を見ながら、現在の患者さんの状況はどうなのか、とアセスメントし対応する事が重要となります。

次回のブログでは、認知症についてお話します。

 

 


急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。

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状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。

また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。

もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。

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