心不全患者の「なんか変?」の評価ポイント Part1

2024年4月10日 ライブラリー

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心不全患者さんの「あれ、いつもと様子が違うな?」

今回は、自宅で生活している心不全患者さんの「あれ、いつもと様子が違うな?来週の定期受診まで様子を見てもいいのか?今日中に受診に行く方がいいのか?」という、緊急性の判断に迷う際の評価のポイントについて解説したいと思います。

入院中の方でも、「この症状は、すぐに主治医に報告して指示を仰ぐ必要があるかないか」というポイントにもなると思いますので、ぜひお役立てください。

「心不全」とは?

まずは疾患についておさらいをしましょう。

一般的には、『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』と言われています。

もう少し詳しく説明します。
心臓には4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)があり、左側は全身に血液を送り出す、右側は戻ってきた血液を受け取る役割があります。

そのうち、心不全の状態とは、2つのような状態になることです。

  • 全身に血液を十分に送り出せない低心拍出によるもの
  • 送り出せない血液がたまるうっ血によるもの

心不全の要因となる2つ

心不全の要因となる疾患は、全てが心臓に由来するものではありません

「心臓」に由来するものとして、下記のようなものが挙げられます。

  • 虚血性心疾患(心筋梗塞など)
  • 心筋症
  • 心筋炎
  • 心毒性心筋障害
  • 高血圧
  • 弁膜症
  • 不整脈
  • 肺高血圧症など

その他に、

  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 腎臓病
  • 呼吸器疾患
  • 脳血管疾患など

このように、心臓だけではなく、全身の血管病変に関連する疾患も心不全に影響があります

また、心不全を起こすのは高齢の方が多いため、「悪いのは心臓だけ」というのは少ないのではないでしょうか。

よく見られるのは、何かしらの合併症をお持ちの方です。そんな場合は、「今現在、一体何が体に悪影響を与えているのか?この症状は“心臓由来”のものなのか?」の判断が難しくなります。

加えて、認知症などが背景にある場合には、本人の自覚症状が乏しくなりがちです。そのため、発覚が遅れ、かなり悪化した状態になって救急搬送や治療開始する場合も考えられます。

心不全悪化時の症状について

前項にも記載しましたが、『低心拍出によるもの』、『うっ血によるもの』を分けて評価していくのが分かりやすいかと思います。少し情報を整理していきましょう。
評価指標として「Nohria-Stevenson分類」があります。

うっ血

左心不全によるうっ血症状

  • (今まで大丈夫だった距離でも)動いた時の息切れ

重症化すると

  • 発作性夜間呼吸困難
    寝てすぐではなく、2~4時間後に息苦しさを認めて眠れない・咳込みがひどくなるなど
  • 起坐呼吸
    横になると息苦しいため、座っている方が楽になる
  • 安静時でも息切れを認める
  • 左側臥位での心音聴取でⅢ音が聴取される
  • 肺野全体で荒い断続性ラ音(水泡音)が聴取される
    肺うっ血によるもの
  • 急性肺水腫
    チアノーゼ・冷汗を伴う喘鳴・ピンク色・血性泡沫状喀痰

右心不全によるうっ血症状

  • 腹部臓器のうっ血
    腸管蠕動低下・食欲不振・便秘・悪心・嘔吐
  • 足のむくみ
  • 体重増加
    食欲がなく、あまり食べていなくても増加
  • 腹部膨満感
  • 腹水貯留
    心不全の浮腫は、肝不全・腎不全と違い、呼吸困難などの左心不全を伴う場合が多い
    3日以内に2㎏の体重増加を認める場合は利尿剤の増量を検討する目安となる
  • 頚静脈怒張
    ベッドを45°挙上し、患者の右側から右内頚静脈の拍動を観察。胸骨角から内頚静脈拍動までの距離が3センチ以上あれば静脈圧は上昇していると考える

低灌流

    • 易疲労感・倦怠感
      筋骨格系への低灌流が起こり、疲れやすくなる、常に体のだるさがある下肢筋肉の疲労感の自覚など
    • 乏尿・夜間多尿
      心不全の早期から夜間尿量の増加を認める。(夜間、静脈還流量が増加することで腎臓への血流が増加するため)低灌流が進展すると乏尿となる
    • 精神神経症状(意識障害・抑うつ・不安・せん妄)
      脳への低灌流や肺うっ血による低酸素血症による。特に、認知症などがある高齢者は、「認知症状の悪化」と判断されやすく、心不全の悪化と気づかれにくいため注意を要する。
    • 末梢組織低灌流
      四肢の冷感・湿潤・蒼白・口唇や爪床のチアノーゼなどを認める
    • 心原性ショック
      収縮期血圧90mmhg未満、通常血圧より30mmhg以上の低下を認め、意識障害・乏尿・四肢冷感・チアノーゼがある

こんな変化は要チェックかも?!

下記にアセスメントの例を挙げてみます。

心不全のアセスメントの例

最近、息があがって畑仕事ができない…

いつから?
同じ動作で増えている?
楽な体勢は?

左心不全症状かも…

夜中に目が覚めてしまうのよ…

咳込みは?
中途覚醒?
尿意は?
だるさで眠れていない?

うっ血または低灌流をおこしているかも…

足がだるい+足のむくみが増強

体重増加は?
INとOUTのバランスは?

右心不全を考慮して、関連症状をチェック

おなかが張って、なかなか便がでないのよ

腹囲は?
おなかの張りや便秘は?
体重増加は?
呼吸困難感も出現しているか?

右心不全を考慮して、関連症状をチェック

さいごに

以上、心不全の概要と心不全悪化時の症状をまとめてみました。
次回は、事例を通して緊急時の判断を行ってみましょう。

 

 


急性期ケア専門士は急性期ケア・急変対応におけるスペシャリストです。

急性期ケア専門士とはHP画像

状態変化の兆候をいち早く察知し、アセスメントから初期対応、医師への報告など急性期におけるケアの実践を行えることを目指す資格です。

また、病院だけでなく地域医療に携わる医療スタッフの方にも、在宅時から基幹病院へ【命のバトンをなめらかに】つなぐために実践できるノウハウを習得できます。

もしもの時の対処に自信がない方や、急変対応をもっと深く学びたい方は、ぜひ受験をご検討ください。

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