急性期で必要とされる認知症看護 Part1
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- 目次
認知症とは
認知症患者の救急受診
日本では、近年、高齢化が進むにつれ認知症患者数は年々増加し、それに伴って救急外来・急性期病棟では認知症を持つ人が急増しています。
認知症患者は転倒・誤嚥性肺炎・尿路感染症の発症リスクが高いうえに、痛みを感じにくく症状を認識しづらくなるため、救急搬送される時には重症化が進んでしまっている場合もあります。
急性期ケア領域で認知症患者をケアするポイントがあります。一緒に学んでいきましょう。
4大認知症の特徴
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症には次のような特徴があります。
- 女性に多い
- 発症時期が特定できない(緩やかに進行し、記憶障害から始まる)
- 初期ではうつ症状・被害妄想がでることがある
- 運動機能は比較的保たれる
血管性認知症
血管性認知症には次のような特徴があります。
- 生活習慣病が危険因子となる
- 障害される部分とされない部分がある
- 再発するたびに悪化し、麻痺・嚥下障害などの症状を伴う場合が多い
- 感情が変わりやすい
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症には次のような特徴があります。
- 認知機能の変動がある
- 幻視がある
- パーキンソン症状や自律神経症状がある
- 抗精神病薬に過敏
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症には次のような特徴があります。
- 初期では記憶障害は目立たない
- 自分勝手に行動する(反社会性)や同じ行動を繰り返す(常同行動)がみられる
- 意欲が低下する
- 食行動のこだわりが強い
急性期における認知症のアセスメント
アセスメントのポイント
救急外来において、患者の自覚症状の把握は重要です。しかし、認知症患者の場合、情報収集が困難となることが多くみられます。
認知症による意識障害がある場合、GCSやJCSの点数が低下してしまうため、新たに生じた意識障害かどうかの確認が必要となります。
また、救急外来や急性期病院などの急激な環境の変化、身体的侵襲などは認知症のある方にとって、症状を悪化させる因子となります。
目の前で起こっている症状だけを見て判断するのではなく、次のような多岐に渡る情報をチームで共有することが大切です。
- ここに至るまでの24時間の症状の変化
- 主病の症状
- 採血やバイタルサインの数値
- 本人の表情や訴えている内容
- 食事
- 排泄
- 使用している薬剤の組み合わせ
- ご家族からの情報
このような情報をもとに、ケア内容を組み立てていきます。
診察時の対応方法
落ち着いて対応する
認知症患者は周囲の雰囲気や家族の態度に影響を受けやすいため、関わるスタッフは落ち着いて安心できるコミュニケーションをとることが大切です。
高齢者の身体的疾患の特徴をアセスメントに活かす
認知症患者は記憶障害により、症状を忘れてしまうということがあります。そのためこちらから積極的に確認することが大切です。家族や施設スタッフなどから普段と違う様子はないかを確認します。
中核症状とBPSD
認知症の症状には中核症状と、周辺症状と呼ばれるBPSDがあります。
- 中核症状
脳の精神機能ではなく、認知機能の障害を指します。
- BPSD
認知症の行動・心理症状のことをいい、うつや妄想などの精神症状と行動症状を合わせたものです。BPSDが表れる前にその予兆がみられることがあります。早期にその予兆に気付き対処することでBPSDを予防できる場合もあります。
BPSDの予兆
これらの言動が現れたときはBPSDが起こる予兆の場合があります。このような言動がないか、患者さんをよく観察し対処することが重要です。
- 服従
やりたくないことをやらされる
- 謝罪
できないときに「ごめんなさい」と謝る
- 転嫁
できないときに自分以外のせいにする
- 遮断
聞こえないふりや寝たふりをする
- 苛立ち
気に入らないことに対して独り言で怒る
<参考文献>
終末期ケア専門士 公式テキスト|第2版
一般社団法人 日本終末期ケア協会急性期ケア専門士 公式テキスト|第1版
一般社団法人 日本急性期ケア協会
認知症患者に対する急性期看護について、過去にブログを掲載しています。こちらもご覧ください。
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