心不全患者の「なんか変?」の評価ポイント Part2
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はじめに
前回は、心不全の概要と症状悪化時のことをおさらいしました。
心不全の「なんか変?」の評価ポイント Part1
今回は、自宅で生活している慢性心不全患者さんの緊急性の判断に迷う評価のポイントについて、解説したいと思います。
「あれ、いつもと様子が違うな?」「来週の定期受診まで様子を見てもいいのか? 今日中に受診に行くほうがいいのか?」という、事例を通して確認していきましょう。
「いつもと違う?」のケーススタディ
事例
Aさん、75歳男性。
- 元々、喫煙、大量飲酒の習慣、糖尿病、高血圧があり、内服治療はできていたが、禁煙できずに過ごしていた。
- 5年前
急性冠症候群により救急搬送され、カテーテル治療を行った。 - 2年前~
労作時の息切れを自覚するようになり、主治医から強く指導を受け、禁煙に成功した。 - 1年前の冬
肺炎を発症し、その合併症として心不全が悪化し入院加療していた。 - 1か月前~
労作時の呼吸困難を自覚し、ここ数週間は、夜寝はじめて数時間後に息苦しさで目を覚ますことが増えていた。 - 本日、訪問看護師が訪問した際、先週に比べて体重が3㎏増加、本人も倦怠感を自覚していた。下肢のむくみもあり、食欲はあまりないと話す。内服薬は飲み忘れなし。
- 明後日は定期の受診予約がある
この場合、受診を早めるか、定期の受診まで経過をみてよいか、どう判断しますか?
時系列で評価してみましょう
観察項目
バイタルサインを測定した際は、数字だけにこだわらず、その他の自覚症状や、家族から24時間の様子などの情報を収集しましょう。
- 食事量
- 排泄の回数や便性状
- 体重の増減
- 息切れの頻度、息切れが治まるまでかかる時間
- 睡眠の状態、夜間の息苦しさの頻度
- 入浴の頻度、かかる時間
- 全身の浮腫の程度、浮腫の場所
- 内服状況
これらの情報を得ることにより、総合的な判断ができるようになります。
アセスメント
Aさんへのアセスメント
事例の内容と、観察項目を踏まえて、アセスメントを行ってみましょう。
Aさんの場合は、喫煙歴があり肺炎の既往もあります。よって、
- 呼吸器疾患の悪化
- 心不全の悪化
の両方の症状を評価していく必要があります。
バイタルサイン以外の、心不全の悪化、または他の症状に関する自覚症状・他覚症状が認められます。
- 1か月前からの労作時の呼吸困難
- 数週間続く夜間の息苦しさ
- 食欲はあまりないのに先週より体重が3㎏増加
- 本人も倦怠感を自覚している
- 下肢のむくみもある
明後日には定期の受診があります。よって、この場合は、救急車の要請とまでいかないですが、その日のうちに受診するよう勧める必要があります。
その結果、心不全増悪で受診後すぐに入院するというパターンも考えられます。
自覚症状・他覚症状が分かりにくい時
上記で挙げた事例は、わかりやすい自覚症状、他覚症状がありました。
もし、認知症などがあり、症状を本人が話しにくい場合は、「患者さんの様子」にヒントが隠れていないかを探していくように心がけましょう。
- 何となく寝つきが悪そう
- 何となくぼーっとしている
- 話している際に息切れがある
- 食事の量が減っているのに体重増加がある
- 言動・行動が不穏
- むくみが強く出ている
- 薬の飲み忘れは無いのにトイレの回数が減っている・失禁量が減っている
次回は、入院中の方の症状が悪化している際に、主治医へすぐに報告する必要があるか、どんな症状を報告するか、事例を通して確認していきたいと思います。
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