呼吸リハビリを急性期ケアに活かす方法
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呼吸リハビリの定義
呼吸リハビリテーションとは、「呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である」とされています。
生涯に渡りリハビリや支援をしていく必要がある理由は、呼吸器疾患の特徴にあります。
代表的な呼吸器疾患といえばCOPDがありますよね。COPDは進行性の消耗性疾患であり、経過が長くなりやすいのが特徴です。そのため、呼吸器疾患は生涯に渡るサポートが重要になってくるのです。
急性期ケアの視点から見た「呼吸リハビリ」には大きく3パターンがあげられます。
- 呼吸不全の急性増悪期の急性期リハビリ
- 回復・維持リハビリと指導、教育
- 術後の呼吸リハビリ
呼吸リハビリの内容とプロセス
一般的な呼吸リハビリの内容
- 運動療法が中心となった呼吸理学療法
- セルフマネジメント教育
- 栄養指導
- 心理社会的支援など
急性期病棟で行われる呼吸リハビリ
ERなどではリハビリが行われていないことが多いですが、急性期病棟では積極的に行われています。
- 人工呼吸器管理中であっても呼吸機能を評価
- コンディショニング
- 呼吸筋補助訓練
- 排痰支援
- 呼吸練習
- 深呼吸支援
- ベッド上での四肢や体幹の他動・自動運動
- SBT(spontaneous breathing trial:自発呼吸トライアル)
呼吸リハビリ介入のプロセス
具体的な目標値を設定し、チームで共有します。
呼吸リハビリではどんな効果が得られる?
効果
一般的には下記のようなことが期待できると言われています。
- 呼吸困難の軽減
- 運動耐容能の改善
- 健康関連QOLの改善など
加えて、急性期ケアの分野においては次のような効果も期待できます。
- 急性増悪による入院後の回復を促進
- 急性増悪からの回復後の生存率の改善
- 不安・抑うつの改善など
このように、急性期ケアの分野でも多くの有益性が認められています。
今後の課題
集中治療領域の進歩によりARDSや重症敗血症が救命され死亡率が低下している一方、新たな課題も出てきています。
- ICU-AW(ICU-acquired weakness)
ICU関連筋力低下
- PICS(Post Intensive Care Syndrome)
集中治療後症候群
- PICS-F(PICS-Family)
- せん妄
特に、せん妄の出現は予後に影響を与えてしまいます。早期の呼吸リハビリによる理学療法は、人工呼吸器管理下におけるせん妄発生率の低下や人工呼吸器装着時間減少および日常生活動作の早期回復も報告されています。
また、不必要な人工呼吸器の継続を避けるため、早期抜管に向けて呼吸リハビリとSBT(spontaneous breathing trial:自発呼吸トライアル)を積極的に実施することが推奨されています。
さいごに
医療の進歩と共に、リハビリの目的も廃用症候群の予防のみにとどまらず、機能回復までの時間の短縮や、予後の改善など、さまざまな効果が期待できるようになりました。今では投薬や手術と同様に患者には欠かせない治療法の一つとなっています。また呼吸リハビリの早期介入は、より多くの有益な結果をもたらすことが報告されています。
これからは、病院の中だけではなく、集中治療中から一般病棟、在宅とシームレスな呼吸リハビリが求められています。
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