この人の意識レベルはどう評価すればよい?~せん妄~
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”意識レベルの評価”にフォーカスを当てた「この人の意識レベルはどう評価すればよい?」シリーズ。第3講目は「せん妄」の意識評価をテーマにお伝えします。
- 目次
せん妄とは
せん妄は突然発生する精神機能の障害で、さまざまな原因(薬剤、炎症、手術などのストレス、代謝異常など)によって起こり、注意障害、認知障害などの症状が現れます。入院中の高齢者によくみられ、転倒や、ケガなどに繋がることがあります。
せん妄は炎症などによって引き起こされる脳の大脳辺縁系(海馬や扁桃体、帯状回など脳の奥にある複数の領域の総称)の過剰な興奮と、中脳や視床などの活動低下によるものと考えられています。
また、病気(肺炎など)や電解質異常(低ナトリウム血症など)などによっても起こるほか、アルコール依存症の人や長期的に飲酒をしている人が急に飲酒をやめたり、ステロイドなど特定の薬剤を使用したりするなど身体に負荷がかかるときにもせん妄がみられます。
ただ、認知症などとは異なり、通常は原因が改善するとせん妄も改善が見込まれます。
せん妄は通常、急に発症します。症状は、原因や人によってさまざまで、夜間に悪くなることが多いとされます。
せん妄でよくみられる症状
よくみられる症状としては、下記が挙げられます。
- 見当識障害(場所や日時が分からなくなる)
- 幻覚(実際にはいない人や虫などが見える)
- 注意障害(会話や食事などに集中できない)
- 認知障害(記憶が抜けてしまう、言葉が出てこない)
これらの症状は、もともとあった認知症や脳血管疾患などとは別に現れます。
せん妄の種類
また、症状の現れ方によって
- 過活動型(焦燥や興奮、医療に対する拒否がみられる)
- 低活動型(活動性の低下、ぼんやりしている)
- 両者の混合型
の大きく3つに分けられます。
せん妄と認知症などの鑑別は難しい!
しばしば認知症やうつ病と間違えられますが、せん妄には「急に発症する」「症状が1日の中でコロコロ変わる」といった特徴があるため区別がつきます。認知機能は急に悪化したり、1日の中で変動が大きくなることはありません。
さいごに
以上、意識レベル判定シリーズとして、高次脳機能障害、認知症、せん妄の場合の意識判定についてご説明しました。明確に「この時間は認知症、この時間はせん妄」と区別がつくわけではありませんが、統合してアセスメントし、医療チームで連携して対応する事が大切となります。
<合わせて読みたい>
「この人の意識レベルはどう評価すればよい?」シリーズの第1回目と第2回目はこちら。
第1回
「高次脳機能障害」の意識レベル判定
https://jaca2021.or.jp/news/assessment-consciousness-level_1/
第2回
「認知症」の意識レベル判定
https://jaca2021.or.jp/news/assessment-consciousness-level_2/
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